1998 年 2 巻 1 号 p. 23-28
意識障害をともなった患者の嚥下機能を評価する為に,嚥下機能評価表を作成し,経口摂取の可能・不可能を検討し報告する. 嚥下障害患者に対する嚥下機能の評価は耳鼻咽喉科疾患や脳血管障害の患者に対するものが一般的で,多くは意識清明な患者が対象である為,意識障害を伴った患者の嚥下機能を評価する場合には適切な指標がない.遷延性意識障害患者に用いる独自の嚥下機能評価表を作成し,当センター入院中の患者で全てを経管栄養に頼っている重症頭部外傷後遺症患者17例を対象とした.評価は,1)栄養摂取の方法,2)口唇の閉鎖機能,3)咀嚼動作,4)嚥下動作,5)咳嗽・逆流の項目ごとに重度10点,中等度8点,軽度5点,極軽度0点の4段階に分類し最重症は50点とした. スコア総点数により40点以上を重症,30~39点を中等症,20~29点を軽症,19点以下を極軽症として分類すると,重症0,中等症5例,軽症11例,極軽症1例という結果であった.各項目ごとの評価では,項目1)ではすべて重症であったが,項目2)~5)では軽度および極軽度の合計が,いずれも過半数を占めていた.各項目ごとに評価したことで,特に点数の高い項目に着目でき,そこに重点を置いた対応策が得られ,遷延性意識障害患者の嚥下訓練を行なっていく上で有用と思われた.