日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
健常成人の舌接触補助床装着時の嚥下動態に関する高解像度マノメトリーによる評価
太田 恵未安田 順一橋本 岳英小金澤 大亮金城 舞玄 景華
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2018 年 22 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

【目的】舌接触補助床(PAP)装着時の嚥下動態を定量的に評価した報告は少ない.咽頭内圧計測が可能な全周性センサーを有する高解像度マノメトリー(high resolution manometry, HRM)は, 1回の嚥下で上咽頭から食道までを連続的に測定することが可能である. PAP装着時における健常成人の嚥下動態を把握し,厚みの違いが嚥下動態に及ぼす影響を定量的に解析することを目的に,本研究を行った.【方法】被験者は,口腔および摂食嚥下機能に問題のない男性 10人(平均年齢 34.2±9.5歳)であった. PAP未装着(未装着)と厚み 2 mm(2 mm),厚み 5 mm(5 mm),厚み 10 mm(10 mm)の PAPをそれぞれ装着した状態に対し, HRM(スターレット,スターメディカル,東京)を用いて計測を行った.検査は座位で行い, 20 chのカテーテルセンサーを外鼻孔より挿入し,圧トポグラフィー上で,上咽頭部の圧力と,上部食道括約筋(upper esophageal sphincter: UES)を示す圧力帯を確認できる位置に留置した.試料として,水 3 ml,ゼリー 3g,全粥 3gを用いた. PAP未装着と各厚みの PAPを装着した状態で,唾液嚥下と各試料を指示嚥下させて, 3回計測を行った.データは記録用パソコンに保存し,測定結果は解析ソフトを用い,圧トポグラフィー上から計測部位の位置決めを行った後,解析ソフトによる自動解析を行った.数値は各被験者の平均値を用い,厚みの違いによる測定値を比較検討した.【結果】上咽頭部最大内圧は,水 3 ml嚥下時に, PAP未装着より 2 mmが有意に低かった.舌根部最大内圧は,ゼリー 3gおよび全粥 3g嚥下時に,未装着時より 10 mm装着時が有意に高かった.また,下咽頭部最大内圧は,ゼリー 3g嚥下時に, PAP未装着より 10 mmが有意に低かった.全粥 3g嚥下時に, PAP未装着より 2 mmが有意に低く,また PAP未装着より 10 mmが有意に低かった.【結論】舌接触補助床の厚みの違いが咽頭内圧に及ぼす影響を,健常成人を対象に HRMを用いて評価した.健常成人では, 10 mmという厚みのある舌接触補助床は舌根部や下咽頭部の最大内圧に影響を与えることが推測された.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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