日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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Print ISSN : 1343-8441
短報
Down症候群者における摂食嚥下機能と感覚刺激反応異常の検討
大久保 真衣山本 昌直杉山 哲也三浦 慶奈青木 菜摘大平 真理子石田 瞭
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2018 年 22 巻 2 号 p. 145-152

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抄録

Down症候群者については,摂食嚥下機能の問題が多く報告されている.実際に Down症候群者の摂食嚥下機能障害(以下,摂食機能障害)の治療を行っていると,摂食機能障害のみならず,感覚反応異常を生じているであろうと思われる症例が認められる. そこで我々は,日本版感覚プロフィール短縮版を用いて感覚刺激による反応異常(以下,感覚反応異常)を評価し,摂食機能障害との関係を検討した. 対象は,大学付属の摂食嚥下リハビリテーション科を受診,もしくは都内特別支援学校にて摂食相談を受け保護者の承諾を得た 3歳から 11歳(平均年齢 7.1±2.7歳)の Down症候群者 20名とした.感覚反応異常は,各セクションの合計点とその総合点を算出した.各セクションと「総合」の年齢帯ごとの平均点から-2SD未満-1SD以上を「高い」,-2SD以上を「非常に高い」とした.また,摂食機能の評価は,嚥下機能と咀嚼機能とした. 摂食機能障害(嚥下機能および咀嚼機能)それぞれの有無と,感覚反応異常(各セクションの合計点および総合点)の「高い」および「非常に高い」の有無の組み合わせで,群分け表を作成した.摂食機能障害群(F群),感覚反応異常群(S群),摂食機能障害と感覚反応異常の両方に問題がある群(FS群),両方とも問題がない群(N群)に分類した. 嚥下機能と感覚反応異常の「非常に高い」では,「触覚過敏性」( p= 0.014)において F, S, FS, N群間に有意差が認められた.また,咀嚼機能と感覚反応異常の「高い」では,「動きへの過敏性」( p= 0.018),「聴覚フィルタリング」( p= 0.002)において, F, S, FS, N群間に有意差が認められた. 摂食嚥下リハビリテーションを希望する Down症候群者においては,摂食機能障害と感覚反応異常を有する者が多数おり,摂食嚥下リハビリテーションを行う際には感覚反応異常を考慮して行う必要があることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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