日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
22 巻, 3 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 中村 達也, 藤本 淳平, 鹿島 典子, 豊田 隆茂, 鮎澤 浩一, 小沢 浩
    2018 年22 巻3 号 p. 185-192
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】重症心身障害児者の舌骨は,嚥下造影検査(VF)で鮮明に投影されないことも多く,咽頭期嚥下の特徴が不明確である.そこで,本研究では,重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を明らかにするために,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を健常成人と比較した.【対象と方法】健常成人19名(健常群)と重症心身障害児者41名(障害群)について,ペースト食品3~5 mLの自由嚥下時のVFを撮影し,30フレーム /秒で動画記録した.VF動画をフレームごとに解析し,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の特定,舌骨挙上開始時の特定が可能だった者の舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の測定,誤嚥の有無の評価をした.さらに,舌骨挙上開始時および舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を,喉頭蓋谷を基準に到達前・到達・通過後の3段階で評定した.統計解析は,一元配置分散分析およびFisher’s exact testを用いて比較した.【結果および考察】舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の群間差は認めなかった.各群の平均値は0.105~0.231秒であり,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は92.8%の対象者で一致していた. 舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は,健常群では到達前:7名(36.8%)・到達:12名(58.3%)・通過後:0名,障害群では到達前:2名(4.9%)・到達:18名(43.9%)・通過後:21名(51.2%)であり,群間差を認めた.これより,障害群は健常群に比較して,嚥下開始前に食塊が深部に到達しやすいと考えられた.【結論】重症心身障害児者は健常成人よりも,ペースト食品を嚥下する際に,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置が喉頭蓋谷を通過する対象者数が多かった.

  • 櫻井 英樹, 西垣 壽人, 池田 三知男, 堀 一浩, 小野 高裕
    2018 年22 巻3 号 p. 193-204
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】生体計測は,ヒトを対象として,咀嚼・嚥下運動を直接数値化することが可能な手法である.本研究では,生体計測の手法を用いて,介護現場で用いられるさまざまな食品のテクスチャーの特徴を客観的な数値データとして把握することを目的とした.【方法】被験者は健常有歯顎者を対象とした.水分含量が多く,舌で潰せる程度のかたさと考えられる食品として,市販品および手作り調製品計28品についてそれぞれ10 gの試料を提供し,舌圧(口蓋部に舌圧センサシートを貼付して測定),嚥下音(咽喉マイクを装着して測定)を解析した.舌圧測定では,食塊形成中においても複数回の嚥下を許可した.嚥下音測定では,全量を1回で嚥下するよう指示した.舌圧は,咀嚼(押し潰し)と嚥下に分けて解析した.このうち,9品については,別途官能評価を実施し,生体計測結果との相関性を確認した.【結果・考察】官能評価を実施した9品においては,その官能評価結果と,各生体計測のうち,嚥下音,咀嚼(押し潰し)時の舌圧,嚥下時の舌圧との相関が確認された.これらの3解析項目によってクラスター分析を行うと,その分類結果がそれぞれ各食品の特徴をよく表しており,「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」にも一部対応がみられた.また,3成分の主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分にて2次元マッピングすると,それぞれのプロット位置が各食品の特徴をよく表していた.この生体計測とデータ解析により,各種食品のテクスチャーを,ヒトの咀嚼・嚥下運動をもとにした客観的なデータから把握することができた.

  • 中村 達也, 北 洋輔, 藤本 淳平, 甲斐 智子, 稲田 穣, 鮎澤 浩一, 小沢 浩
    2018 年22 巻3 号 p. 205-213
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を,嚥下時舌骨運動を健常成人と比較することで明らかにすることを目的とした.【対象と方法】健常成人24名(健常群)と重症心身障害児者24名(障害群)について,嚥下造影検査(VF)を用いてペースト食品3~5 mLの嚥下を撮影し,30フレーム /秒で動画記録した.第二および第四頸椎を基準線とした座標面を設定し,VF動画をフレームごとに解析することで,舌骨の挙上開始時から最大挙上時までの前方・上方・総移動距離,移動軌跡,下顎 ―舌骨間距離を測定した.さらに,舌骨移動時間を各対象者について共通の時間単位に線形変換後,舌骨運動を挙上相と前進相の段階に分けた.そして,健常群の平均値95%信頼区間下限値を基準値とし,挙上相で基準値を下回った者を挙上相後退群,前進相で下回った者を前進相停滞群と群分けし,評価結果を一元配置分散分析で群間比較した.【結果および考察】挙上相後退群は12名,前進相停滞群は7名であった.分散分析および多重比較の結果,舌骨の前方移動距離は,健常群が挙上相後退群(p<0.01)および前進相停滞群(p<0.01)に比較して有意に大きかった.舌骨の上方移動距離は,挙上相後退群が健常群に比較して有意に大きかった(p<0.01).下顎 ―舌骨間距離は,挙上相後退群が健常群(p<0.01),前進相停滞群(p<0.05)に比較して有意に大きかった.この要因として,挙上相後退群は腹側舌骨上筋群の筋の延長による筋出力低下,前進相停滞群は舌骨下筋群の伸張性低下または低緊張による筋出力低下が考えられた.【結論】重症心身障害児者には,舌骨が主に上方に移動すべき時期に後方に牽引される群と,主に前方に移動すべき時期に移動距離が不足する群が存在した.

  • 髙瀬 理恵子
    2018 年22 巻3 号 p. 214-224
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】精神科病院に入院中の統合失調症を患う高齢者における栄養状態低下の要因を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は,精神科病院に入院中の65歳以上の統合失調症患者66名とし,3食経口摂取可能な者とした.この対象の栄養状態をGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)により評価した.栄養状態の低下に影響しうる要因として,基本属性,ADL(障害高齢者の日常生活自立度判定基準),摂食嚥下機能(現在歯数,repetitive saliva swallowing test: RSST回数),社会機能(Rehabilitation Evaluation Hall and Baker: Rehab),認知機能(Mini-Mental State Examination: MMSE)を調査し,GNRIとの関連を,単変量解析およびステップワイズ回帰分析を用いた多変量解析にて解析した.【結果】単変量解析でGNRIと有意な関連が認められた項目は,罹病期間,入院期間,Rehab下位項目のセルフケアおよび社会生活の技能であった.ADL,現在歯数,RSST,MMSEとの有意な関連は認められなかった.GNRIを独立変数としたステップワイズ回帰分析でGNRIと有意な関連が認められた項目は,入院期間と社会生活の技能であり,GNRIに強い影響を与えている順に入院期間(β=-0.40,p= .001),社会生活の技能(β=-0.23,p= .045)であった.【結論】統合失調症を患う高齢者の栄養状態低下の要因は,入院期間の長期化と社会生活の技能の低さであった.高齢の統合失調症患者の栄養状態の低下には,不足したエネルギーや栄養素を補うだけでなく,日中の過ごし方が活性化するような場の提供と,主体的に生活を楽しむための社会生活の技能や自信の回復が必要である.

  • ―歯科による肺炎予防システムの構築―
    尾﨑 研一郎, 馬場 尊, 中村 智之, 稲葉 貴恵, 川島 広明, 中島 明日佳, 福井 友美, 間々田 浩明, 黒後 祐美, 中里 圭佑 ...
    2018 年22 巻3 号 p. 225-236
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】今回,病棟専属の常勤歯科医師,歯科衛生士が急性期病棟の看護師とリハビリテーション科が参加する肺炎予防システムを構築した.本研究では,急性期脳卒中患者に対する本システムの効果について,入院中の肺炎発症と退院時の経口摂取不能の観点から調査した.【方法】肺炎予防システムは病棟の全患者に対する看護師による口腔アセスメントと口腔衛生管理の標準化,歯科依頼手順,リハビリテーション科による摂食嚥下評価の情報共有からなる.対象は,当院に入院した脳卒中患者のうち,肺炎予防システム導入前の2012年4月から2013年3月に関わった234人(男性127人,女性107人,平均年齢72±13歳)と肺炎予防システム定着後の2014年4月から2015年3月に関わった203人(男性107人,女性96人,平均年齢74±11歳)とした . 診療録とThe Japanese Diagnosis Procedure Combinationデータベース,リハビリテーション科と歯科内で運用している患者臨床データベースより入院時の属性と帰結について調査し,導入前と定着後について解析を行った.【結果】定着後群は,導入前群よりも重度な症例が多かった.肺炎発症は,導入前群15%,定着後群8%であった.ロジスティック回帰分析において,導入前群の肺炎発症は定着後群の肺炎発症と比較してオッズ比2.70(95% CI 1.17―6.21, p=0.020)であった.肺炎予防システムのほかに肺炎発症と有意に関連したのは,入院時の意識レベルと,初回評価時の摂食嚥下障害の重症度であった.退院時の経口摂取可能例の割合については導入前群と定着後群の間で変化を認めなかったが,導入前群より重度であった定着後群に対し経口摂取の割合を減らさなかった.【結論】肺炎予防システムは,肺炎予防と経口摂取維持に効果が認められた.これは,急性期病棟の看護師,歯科,リハビリテーション科が,患者の状態を共有したうえで専門的介入ができたことによる結果と考えられる.

  • 小山 秀紀, 金髙 弘恭, 猪狩 光郎, 矢吹 浩一, 山口 一良, 小山 重人, 出江 紳一
    2018 年22 巻3 号 p. 237-248
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,摂食嚥下リハビリ用マウスピースを新たに開発し,その有用性を明らかにすることを目的とした.このマウスピースは,舌を挙上させる運動を補助することで,簡便かつ効果的に摂食嚥下機能を向上させることを意図して設計された.舌を口蓋へ適切に押し付けるための傾斜部を備え,一定の抵抗負荷を与えるために高硬度の医療用シリコーンゴム(MED-6019, NuSil Technology, USA)で成型された.また,個人の口蓋形態に適合するように,舌接触部の傾斜が20°,30°,40°の3種類が製作された.調査では,マウスピースを用いた舌挙上訓練が嚥下機能に及ぼす影響を調べた.対象は通院患者20名,調査デザインは単群試験とした.介入期間は3カ月間,測定時点は初日・1カ月後・3カ月後の訓練前・訓練後であった.測定項目は,舌圧測定器(Orarize®, ジェイ・エム・エス)を用いた舌圧と口唇圧,口腔水分計(ムーカス®,ライフ)を用いた口腔粘膜湿潤度,ガム法に基づく咀嚼能率,RSSTによる反復唾液嚥下回数であった.訓練課題は,対象者の口蓋角度に近似のマウスピースを自宅で1日1回,15分間装着し,そのうち3分間の舌挙上訓練とした.統計解析は,介入期間と訓練を要因とする二元配置分散分析を行った.分析対象は,60歳未満,途中離脱者を除き,軽・中等度の嚥下障害が疑われる高齢患者13名(60~82歳,平均年齢73.5±6.4歳,男性5名,女性8名)であった.分析の結果,舌圧で介入期間の主効果が有意であり(p<0.05),初日に比べて1カ月後が有意に高かった(p<0.05).また,介入後に口唇圧が増加し,訓練直後に嚥下回数が増加する傾向がみられた.本マウスピースを装着して舌挙上訓練を継続的に行うことで,高齢患者の舌圧が増加し,摂食嚥下機能に寄与する可能性を示した.

  • 迫田 綾子, 原田 裕子
    2018 年22 巻3 号 p. 249-259
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,看護における食事時のポジショニング教育プログラムの構成要素を明らかにし,汎用化のための示唆を得ることを目的とした.【対象および方法】対象は,摂食嚥下障害認定看護師で同意を得た6名であった.方法は,フォーカスグループインタビュー法で半構成的面接を行った.インタビューは,「患者の状況」「ポジショニングの現状と教育」「望ましい教育の方向」などについて自由に語ってもらった.分析方法は,逐語録から重要な語り部分をアイテムとし,類似するものをカテゴリーとして抽出した.研究期間は2014年2~12月であった.【結果および考察】入院患者の多くは,不良姿勢や誤嚥リスク患者の存在と,食事時の基本的な看護援助のニーズが山積している現状を示していた.看護師のポジショニングの現状は,プラスとマイナスの要素を抽出した.プラスのカテゴリーは,『ケアリングマインド』『チームケアの実践』『適切なポジショニング技術』『リスク管理』『患者情報の共有』であった.マイナスのカテゴリーは,『観察不足』『不適切なポジショニング技術』『認識不足』『多忙な環境』であった.認定看護師は,ポジショニングにおいても,『実践』『指導』『相談』の役割を果たしていた.ポジショニング教育は,『対象者を決める』『仲間をさがす』『組織へ働きかける』『学習の機会をつくる』であった.教育方法は,『基礎から伝える』『患者体験を促す』『コーチングをする』『技術評価をする』であった.ポジショニングの効果およびゴールは,看護師は『技術力向上』『業務改善』『相互成長』であり,患者は『食べるよろこび』『誤嚥予防』であった.教育プログラムは,抽出したカテゴリーを統合して概念図を構成した.ポジショニング技術の深化は,看護師と患者が「食べるよろこび」を共有できると考える.

短報
  • 東郷 将成, 佐藤 雅俊, 山口 太一, 皆川 夏樹, 伊藤 真義
    2018 年22 巻3 号 p. 260-266
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    多くの高齢者を抱える慢性期療養型の病院では,誤嚥性肺炎が問題視されている.誤嚥性肺炎の諸症状に発熱や炎症反応があることから,食事を経口摂取している患者では,発熱や炎症反応が上昇した際に誤嚥性肺炎が疑われ禁食となる場合がある.しかしながら,これまでに療養型病院における食事の経口摂取の中断による非経口摂取状況の長期化が,発熱や炎症反応の改善予防に有効かどうかは不明であった.本研究の目的は,長期間の経口摂取と非経口摂取による栄養摂取方法の違いが,発熱および炎症反応に及ぼす影響を後ろ向き研究により明らかにすることであった. 対象は,療養型病院に入院している経口摂取患者23名(Oral Nutrition: ON群)と非経口摂取患者58名(Enteral Nutrition: EN群)であった.両群は,体温および発熱日数の生理学的指標,WBCおよびCRPの生化学的指標をカルテより抽出した.抽出期間は抽出時点より6カ月間であった. 抽出の結果,生理学的指標である体温および発熱日数は,EN群がON群よりも有意に高値であった(p<0.01).生化学的指標であるWBCおよびCRPにおいても,EN群がON群よりも有意な高値であった(p<0.05). EN群は,ON群よりも体温高値および発熱日数が多く,炎症反応指標が高値を示した.これらのことから,口腔を介さない長期間の非経口摂取状況は,発熱や炎症反応の改善に有効ではないと考えられる.

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