2019 年 23 巻 3 号 p. 189-193
【緒言】頸椎椎体骨棘により喉頭蓋の運動が阻害されていた患者に対して,嚥下造影下で姿勢の調整を行い,喉頭蓋の動きに改善がみられた症例を報告する.
【症例】7 年前の橋梗塞の既往がある76 歳の男性.慢性痒疹にて入院加療中に誤嚥性肺炎と急性膿胸を発症した.
【経過】不顕性誤嚥を疑い,嚥下造影検査を施行したが,誤嚥は認めなかった.しかし,喉頭蓋が頸椎前面(C4-C5)のくちばし状の骨棘に引っ掛かり,喉頭蓋の運動を妨げ食塊の通過を阻害していた.また,喉頭蓋が反転しないことがあり,食塊の咽頭残留がみられ嚥下障害を認めた.嚥下造影下で,座面の調整と頭頸部の位置を調整したところ,喉頭蓋の動きが改善し,咽頭のクリアランスも向上した.日常の食事場面では,両手動作を促して,食器を持って食べる動作が定着したことで,嚥下造影時に調整した姿勢と同様の姿勢を保つことができた.退院までの間,誤嚥性肺炎を再発することはなかった.
【考察】喉頭蓋の運動を妨げていた要因として,くちばし状の骨棘に加え,橋梗塞による舌根部の後退の不十分さや舌骨の前上方への動きの乏しさが基盤にあったと推察した.嚥下造影検査時の姿勢調整は有用であり,座面を調整し,頭頸部を頸部突出屈曲位に変化することができた.この姿勢を保つことで,嚥下時の舌根部の後退を援助し,咽頭腔が広がり喉頭蓋の反転を改善したと考えられた.