【目的】健常高齢者の口腔機能の実態と質問紙による嚥下障害の有無,食事中の口腔期や咽頭期の症状と食形態について明らかにすることを目的に調査を行った.
【方法】対象は,要介護者を除く質問に回答できる65 歳以上の在宅高齢者104 名を対象とした.対象者に対し,口腔機能[ 口腔粘膜湿潤度,音節交互反復運動(以下ODK),舌圧,咀嚼能力] を測定し,聖隷式嚥下質問紙による嚥下障害の有無,食事中の口腔期や咽頭期に関する質問(聖隷式嚥下質問紙の問3~問11),食べにくくなった食品と食形態の工夫について調査を行い,口腔機能と調査項目との関連について検討した.
【結果】ODK/pa//ta//ka/・舌圧・咀嚼機能は年齢と相関を認め,ODK/pa//ta//ka/ は相互間の関連で相関を認め,舌圧はODK/ta//ka/ と相関を認めた.また,嚥下障害あり群でODK/ta/ が,嚥下障害の疑いor なし群に比べて有意に低い値を示した.口腔期・咽頭期の症状と口腔機能との関連では,食べるのが遅くなった群でODK/ta/ が,食事中にむせることがある群で舌圧,硬い物が食べにくくなった群で咀嚼機能が,そうでない群に比べて有意に低い値であった.食べにくくなった食品と食形態の工夫では,硬い物あり群でODK/pa//ka/,のどに貼りつくものあり群でODK/ka/,食形態の工夫では,軟らかくしている群でODK/pa//ka/ が,そうでない群に比べて有意に低い値であった.
【結論】65 歳以上の健常高齢者において,ODK/pa//ta//ka/・舌圧・咀嚼機能は年齢と相関を認め,加齢とともに機能の低下を認めた.また,口腔期・咽頭期の症状がある群や食形態の工夫をしている群は,そうでない群に比べて口腔機能が有意に低下していた.