2020 年 24 巻 1 号 p. 26-37
【目的】現在高齢化率は27.7% と過去最高となり,高齢者の誤嚥性肺炎による死亡率が高いことが問題視されている. 本研究の目的は,地域に在住する65 歳以上の高齢者の口腔ケアおよび摂食機能の実態を明らかにし,嚥下体操の研修会の前後で,自ら摂食機能を健康管理することへの意識の変化を明らかにすることである.
【方法】老年看護学教員と看護学生3 名とが,地域の5 ヵ所の老人クラブを訪問し,口腔ケアの重要性,嚥下体操・唾液腺マッサージおよびパタカラ口腔体操の指導の介入を実施した.介入の前後で,口腔・摂食機能,口腔ケアの状況,加齢に伴う口腔機能低下への認識および自己健康管理方法に関して,自記式質問紙調査を行った.
【結果】アンケート調査において有効回答が得られた77名(平均年齢76.3±6.1 歳:男性33名,女性44名)を研究対象とした.参加者の21% は独居で,1 日の食事回数は90% の人が3 回であった.介入前の歯磨きの平均回数は2.4±1.1 回/ 日で,朝食後や就寝前に行われることが多かった.研究参加者の62.3% に義歯があり,約40% の参加者に食事中にむせる症状や口渇があることが示された.介入前の嚥下体操の認知度は35.1% で,摂食機能に対する健康管理への意識がある人は41.6% であった.介入後に摂食機能に対する健康管理への意識が変化した人は74.0% で,歯磨きを行おうとする回数が有意に増加した (p=.000).参加者のうち31.2% の人が,嚥下体操の継続の意志を示した.
【結論】口腔ケアおよび嚥下体操の指導は,地域高齢者の約7 割の人々に,摂食機能に対する健康管理への意識の変化をもたらし,歯磨きを実施しようとする回数を有意に増加させた.しかし,一度では知識の定着は困難であるため,継続して研修会の機会を設ける必要性が示唆された.