日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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短報
高齢者とその家族の胃瘻造設検討時における摂食・嚥下障害看護認定看護師による意思決定支援
井坂 恵市村 久美子安川 揚子
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2020 年 24 巻 2 号 p. 177-183

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抄録

【目的】本研究は,経口摂取が困難となった高齢者とその家族の胃瘻造設検討時における,摂食・嚥下障害看護認定看護師(以下,CN)による意思決定支援の現状を明らかにすることを目的とした.

【対象および方法】対象は,CN として3 年以上の臨床経験を有し,高齢者の胃瘻造設を検討する場面に関わったことがあり,同意の得られた4 名であった.2017 年8~12 月にかけて半構成的面接法を行い,内容分析を用いて質的帰納的に分析した.

【結果】研究協力者の看護師としての平均経験年数は20.0±5.2 年,CN としての経験年数は6.8±2.2 年であった.研究協力者の語りから,321のコード,37のサブカテゴリー,11のカテゴリーが抽出された.さらに,そこから次の3 つのコアカテゴリーが抽出された.経口摂取が困難となった高齢者とその家族の胃瘻造設検討時において,≪経口摂取の可能性と胃瘻造設を巡る退院後の生活まで見据えた専門的支援≫,≪選択から意思決定後まで揺れ動く高齢者とその家族の気持ちに寄り添った支援≫を行っていた.また,高齢者にとって最善な選択であったかどうか葛藤を抱きながらも,≪高齢者にとって最善な選択へ導こうとする信念≫を抱き支援していた.

【考察】過去の高齢者の意思を考慮しつつ,今なら何を望むのかについて,家族と医療者が話し合いを積み重ね,納得のいく着地点を見つけていくことが重要であると考える.それと同時に,今後の家族の負担も見据えた支援を行っていく必要がある.

【結論】CN は高齢者にとって胃瘻造設が最善な選択であったかどうかという葛藤を抱きながらも,高齢者の食べたいという思いを大切にし,専門性や実践知を駆使した意思決定支援を行っていた.

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© 2020 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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