日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
ゲル化コーティング製剤の服用性の評価
鈴木 奈緒秋山 滋男岸本 桂子原田 努倉田 なおみ
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2020 年 24 巻 3 号 p. 231-239

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抄録

【目的】本研究室では,咽頭の通過性向上を目的に,コーティングがゲル化する錠剤を考案・作製した.これを参考にゲル化製剤が上市されたが,ゲル化製剤の飲みやすさについて人を対象として検証した研究はない.そこで,薬効成分を含まない非ゲル製剤とゲル化製剤を用い,官能評価により飲みやすさの比較検討を行った.

【方法】被験者は100 名(男性28 名,女性72 名,平均年齢29.0±9.7 歳)で日頃の錠剤の服用や嚥下機能に問題がない健康成人とした.試料は,コーティングがゲル化しない非ゲル製剤の異形錠とミニタブレット(以下,ミニタブ)および,コーティングがゲル化するゲル化製剤の異形錠とミニタブの4つを用いた.被験者は無作為かつランダムに割り付けられ,4 つの試料の飲みやすさを「楽に飲める,飲める,飲みにくい,飲めない」のいずれかで評価した.また,剤形ごとに非ゲル製剤とゲル化製剤のどちらが飲みやすいかの直接比較を行った.

【結果】非ゲル製剤とゲル化製剤の飲みやすさを「楽に飲める,飲める,飲みにくいおよび飲めない」の3 段階でWilcoxon 符号付き順位検定を用いて各剤形で比較したところ,両剤形ともゲル化製剤は非ゲル製剤より飲みやすく(p<0.05),ゲル化コーティングによる効果は,異形錠で中程度(r=0.45),ミニタブで高程度(r=0.60)であった.直接比較をχ2適合度検定で比較したところ,両剤形とも「ゲル化製剤が飲みやすい」は「非ゲル製剤が飲みやすい」と「変わらない」の合計よりも有意に多かった(p<0.05).

【考察】健康成人において,両剤形ともゲル化製剤は非ゲル製剤と比較し,服用しやすいことが明らかになった.これは,ゲル化製剤はコーティングがゲル化し,錠剤をゼリーに包んで服用するのに近い状態になったため,口腔や咽頭の通過性を向上させたことによると考えられる.

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© 2020 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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