2020 年 24 巻 3 号 p. 258-265
【目的】ストローとコップで液体を摂取した際の舌と口蓋の接触点について,エレクトロパラトグラフィ(以下,EPG)を用いて観察した.
【方法】健常成人6 名を対象とした.124 点の接触センサ付き人工口蓋床を製作し,舌と口蓋の接触点数を観察した.食具はストローとコップ,試料は常温水とトロミ水(LST 値40 mm)を用いた.課題は,ストローで水を飲む課題(ストロー条件),ストローでトロミ水を飲む課題(トロミ条件),コップで水を飲む課題(コップ条件)の3 つとした.舌と口蓋の接触点は,嚥下前に舌と口蓋が完全に接触していることをEPG で確認した時点から,試料を口腔内に入れ嚥下音開始までの舌と口蓋の接触点を対象とした.EPG 計測結果から,舌と口蓋の接触点(舌口蓋接触点)と舌と口蓋の非接触時間(以下,舌口蓋開放時間)を検討した.本研究では,舌口蓋接触点が120 点を下回った時点から120 点に戻るまでを舌口蓋開放と定義した.舌と口蓋の接触点が最も少なかった点を舌口蓋最大開放点と定義した.統計学的有意差の検討には,Wilcoxon の符号付き順位検定を用いた.
【結果】ストロー条件とコップ条件における舌口蓋最大開放は,コップ条件で有意に開放する結果となった(p=0.02).ストロー条件とトロミ条件では,有意な差はなかった(p=0.11).舌口蓋開放時間は,ストロー条件とコップ条件(p=0.02),ストロー条件とトロミ条件(p=0.02)の両比較とも,ストローでトロミなし液体飲水が最も舌口蓋開放時間が短縮する結果となった.
【考察】コップとストローは飲水時の舌口蓋接触が異なっていた.食具によって液体飲水時の口腔運動は異なり,その特徴を考慮して食具の選択をすることが重要である.