日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
腱性拘縮・ミオパチー・肺線維症を伴う遺伝性線維化多形皮膚萎縮症(hereditary fibrosing poikiloderma with tendon contractures, myopathy, and pulmonary fibrosis:POIKTMP)の診断で嚥下障害を呈した1 例
辻澤 陽平千葉 春子大澤 恵留美池田 聡生駒 一憲
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キーワード: POIKTMP, FAM111B, 嚥下障害
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2020 年 24 巻 3 号 p. 266-272

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抄録

【緒言】嚥下障害を呈した腱性拘縮・ミオパチー・肺線維症を伴う遺伝性線維化多形皮膚萎縮症(hereditary fibrosing poikiloderma with tendon contractures, myopathy, and pulmonary fibrosis:POIKTMP)に嚥下訓練する機会を得たので経過を報告する.

【症例】47 歳(X 年),男性.X-11 年に嚥下障害を自覚し,X-4 年に顔面の多形皮膚萎縮,四肢近位筋の筋力低下などの多彩な症状を呈し,FAM111B 遺伝子変異によりPOIKTMP と診断された.

【経過】X 年に間質性肺炎の増悪で入院し,言語聴覚士による嚥下訓練を開始した.障害特徴を把握するため,X-3 年の嚥下造影検査と今回の結果を比較検討した.項目は,嚥下反射が惹起された時の食塊の先端位置,喉頭挙上遅延時間(LEDT),舌骨移動距離の3 項目とした.その結果,口腔期に大きな変化はなく,咽頭期について,X 年はX-3 年と比較してLEDT が延長し,嚥下反射惹起の遅延が顕著となった.また舌骨は,上方と上前方への移動距離が狭小化した.

【考察】本例は,口腔期と比較して咽頭期の障害が強かった.嚥下訓練を行ううえで,栄養状態を考慮した負荷量の調整が必要であり,早期から栄養状態をモニタリングすることが重要だと推察された.先行研究では,頸部の筋力低下がない例は嚥下障害がない一方で,頸部の筋力低下がある例は嚥下障害がみられた.本例も頸部の筋力が低下し,嚥下障害が出現していた点は一致した.嚥下障害の出現には,頸部の筋力低下が関係している可能性が高く,頸部の筋力に着目することが重要だと推察された.

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© 2020 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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