【目的】「つばめ体操」は,地域高齢者の摂食嚥下機能,呼吸機能および四肢運動機能を維持・促進するために制作された.術前補助化学療法を受ける食道がん患者に適用するにあたり,パイロットスタディとして,若年健常女性に「つばめ体操」を3 週間実施した際の効果を明らかにした.
【方法】対象は平均年齢21 歳の女性14 名.「つばめ体操」は,pa 行・ta 行を多く含む歌詞を歌いながら頸部・肩部・胸部・上肢・下肢の運動で構成される(1 分11 秒).4 回の反復実施を1 セットとし,ライフコーダGS4 秒版® を装着し「つばめ体操」の運動強度を測定した.
対象者に「つばめ体操」を1日3セット3週間実施することを依頼し,その実施前後で舌圧,/pa/ /ta/ /ka/ の発話機能,最大呼気量,僧帽筋と胸鎖乳突筋の弾力性・硬度,握力,骨格筋量,4 m 歩行速度を測定した.測定には,舌圧測定器®,健口くん®,電子ピークフローメーター®,MyotonPRO 組織硬度計®,デジタル握力計®,InBody270® を用いた.統計解析ソフトを用いて分析し,有意水準を5% とした.
【結果】「つばめ体操」の1 セットの運動強度は1.41±0.13 Mets.3 週間の継続実施の完遂率は79% であった.完遂率70% 以上の11 名について実施前・後の値を比較した結果,舌圧,歩行速度は実施後に有意に増加した(p<0.05).胸鎖乳突筋の硬度(左),僧帽筋の硬度(左右)および僧帽筋の弾力性(右)は,実施後に有意に減少した(p<0.05).一方,/pa/ の発話回数が実施後に有意に減少した(p<0.05).
【結論】「つばめ体操」は,運動強度が低いが,3 週間継続することで舌圧や歩行速度を増加させ,僧帽筋の弾力性や硬度を低下させることが示唆された.ただし,実施後に/pa/ の発話回数が減少したため,人との交流頻度などの影響を検討する必要がある.