日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
嚥下外来に関わる多職種の在宅療養高齢者と家族への支援の現状
―本人と家族の納得を目指した支援のプロセス―
前川 一恵藤野 文代飯田 貴俊
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2022 年 26 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

【目的】嚥下外来に関わる多職種の,在宅療養高齢者(以下,高齢者)と家族への支援の現状を明らかにすることである.

【方法】A 県内の嚥下外来のある21 病院の中から,本研究への協力の同意を得た4 病院のいずれかに所属し,嚥下外来に関わっている多職種8 名を対象とし,半構造化面接による質的帰納的研究を行った.分析にはM-GTA の手法を用いた.

【結果】30の概念と7つのカテゴリー(以下,[ ]とする)が生成された.高齢者と家族への多職種による初期の支援として,[本人および家族の食事への意向を聞く],[全体的な背景を踏まえた摂食嚥下機能の評価をする]支援を行っていた.誤嚥のリスクはあるが経口摂取が可能な高齢者に対しては,[生活全体と介護力のバランスを踏まえた指導をする]支援を行い,誤嚥のリスクが高く経口摂取が難しい高齢者に対しては,[本人の飲み込みが難しい現状を家族に説明する],[本人の味わう楽しみを支える],[本人と家族の安定した生活について話し合う]支援を行っていた.また,人工的水分・栄養補給法を希望せずに看取りを決断する家族や,嚥下調整食の指示があるにもかかわらず,食べたい物を食べる選択をする高齢者に対しては,[多職種で支援の方向性を決める]支援を行っていた.これらの支援の最終目標としてコアカテゴリー(以下,《 》とする),《本人と家族と多職種で実現可能な目標をすり合わせる》支援を行っていた.

【結論】嚥下外来に関わる多職種らは,高齢者と家族の食べることへの意向を尊重し,納得を目指した支援を行っていた.看取りを決断する家族や食べたい物を食べる選択をする高齢者もおり,本人と家族と多職種で実現可能な目標をすり合わせていた.

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© 2022 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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