2022 年 26 巻 1 号 p. 31-38
【緒言】嚥下障害は頭頸部癌術後に多く認められる.われわれは頭頸部癌術後における嚥下障害を呈した患者3 名に対し,急性期病院退院直後に嚥下訓練を目的とした短期入院下での集中的嚥下リハビリテーションを行い,摂食状況が改善した症例を経験したので報告する.
【症例1】65 歳男性.診断;左側口底癌術後による送り込み障害と患側の食塊移送を主徴とする摂食嚥下障害.訓練内容;前傾姿勢での排出,頸部ストレッチ,舌ストレッチなどの間接訓練,体幹右側傾斜,頸部左側回旋姿勢での1 日3 回の直接訓練を指導した.9 日間の入院期間で,藤島のGr は3 から8,藤島のLv は3 から8 に改善した.
【症例2】59 歳男性.診断;左側中咽頭癌術後による送り込み障害,および食道入口部開大不全を主徴とする摂食嚥下障害.訓練内容;前傾姿勢での排出,バルーン拡張法などの間接訓練,体幹右側傾斜,頸部左側回旋姿勢での1 日3 回の直接訓練を指導した.4 日間の入院期間で,藤島のGr は2 から5,藤島のLvは1 から5 に改善した.
【症例3】32 歳男性.診断;左側舌癌術後による送り込み障害を主徴とする摂食嚥下障害.訓練内容;前傾姿勢での排出,頸部および肩部ストレッチ,舌負荷訓練などの間接訓練,10 度リクライニング姿勢での1 日3 回の直接訓練を指導した.8 日間の入院期間で,藤島のGr は5 から8,藤島のLv は4 から7 に改善した.
【考察】本報告では入院下で集中的嚥下リハビリテーションを実施することにより短期間での嚥下機能の向上が得られた.直接訓練を安全に実施するために姿勢調整法,間接訓練として前傾姿勢での排出法を指導した.また,直接訓練として,食品の一口量,粘度,経口摂取総量を段階的に調整し,効果的な機能向上が得られたと考えられる.これは,急性期病院退院後,早期に適切な集中的嚥下リハビリテーションを指導することで,短期間に嚥下機能の大きな改善が得られたことによると考えられた.