学会分類2021(とろみ)では,新たに粘性の簡易的測定法として「シリンジ法」が記載され,経腸栄養剤に対する対応については,薄いとろみ程度であればシリンジ法で確認することが勧められている.しかし,経腸栄養剤には様々な種類があり,市販されているとろみ調整食品は複数あることから,経腸栄養剤のとろみの測定については,様々な視点から検証を重ねることが望ましい.本研究では,医薬品経腸栄養剤に対してとろみ調整食品を使用する際の,溶解量や静置時間の違いによる粘性の変化,とろみ調整食品の種類に応じた粘性の違いについてシリンジ法で検証し,粘度計を用いた粘度測定や官能評価による判定との一致度について検討を行った.
経腸栄養剤に市販のとろみ調整食品を溶解させ,溶解量による粘性の違いや経時的な粘性変化を検証した.4 種類の経腸栄養剤に対して6 種類のとろみ調整食品をそれぞれ4 段階濃度で溶解させ,溶解量に応じた粘性変化や経時的変化をシリンジ法,粘度計測定,官能評価で検証した.シリンジ法による液体の残留量,粘度計測定値,官能評価結果に基づき,液体の粘性を0 から4 までの5 段階にスコア化し,シリンジ法,粘度計測定,官能評価によるスコアの一致度について検証した.
シリンジ法により評価される粘性は,実際の粘度よりも低く評価された.さらに,粘性の経時的変化について,シリンジ法でも粘度計による測定でも経時的に粘性が上昇し,特にとろみ調整食品の溶解量が多い場合には濃いとろみの粘度域をはるかに超える粘度となった.シリンジ法と液体の官能評価結果は類似しやすく,官能評価では粘性スコアが高い傾向を認めた.官能評価のほうが粘度測定による粘性スコアよりも,シリンジ法との一致率が高かった.
シリンジ法により経腸栄養剤のとろみを測定する際には,これらの特徴を理解のうえで臨床活用することが望ましい.