【緒言】近年,嚥下障害患者に対して電気刺激による治療の有効性が報告されている.しかし,電気刺激のうち干渉波電気刺激(IFCS)を用いた治療法の嚥下機能に対する詳細な影響は明らかとなっていない.今回,われわれはIFCS が健常成人の摂食嚥下機能に与える影響を検討したので報告する.
【対象と方法】健常成人18 名を対象とし,両側頸部皮膚上へのIFCS の有無(IFCS, Sham)の条件で,10 分間の測定から得た毎分の自発嚥下回数,RSST による随意嚥下回数,唾液分泌量,咀嚼能力検査時のグルコース溶出量を測定した.IFCS の刺激強度は感覚閾値より弱い強度とした.計測は2 日間行い,1 日目にIFCS またはSham をランダムで選択し,刺激前と刺激時で測定して,1 週間後に同様の測定をもう一方の刺激で行った.IFCS およびSham の刺激前および刺激時における各評価項目の変化を,t 検定を用いて統計解析を行った.
【結果】IFCS 群では自発嚥下回数;1.21 回,1.52 回(p=0.001),随意嚥下回数;8.00 回,8.39 回(p=0.287),唾液分泌量;5.35 g,5.51 g(p=0.548),グルコース溶出量;168.67 mg/dL,203.22 mg/dL(p=0.017)で,自発嚥下回数とグルコース溶出量で有意な増加を認めた.一方でSham 群では,自発嚥下回数;1.28 回,1.38 回(p=0.217),随意嚥下回数;8.00 回,7.83 回(p=0.636),唾液分泌量;5.52 g,6.04g(p=0.048),グルコース溶出量;169.39 mg/dL,181.11 mg/dL(p=0.272)であった.
【結語】本研究の結果,IFCS により自発嚥下回数とグルコース溶出量に有意な増加を認めた.このことから,上喉頭神経に対するIFCS を行うことで,嚥下機能の向上に加え,咀嚼機能に対して影響を有する可能性が示唆された.
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