2022 年 26 巻 2 号 p. 87-98
市販介護食品のユニバーサルデザインフード(以下UDF)について有用性を明らかにする目的で官能評価と物性測定を行い,対照として一般品(手作り品)と結果を比較した.試料は,摂取頻度の高い「主食」のお粥とパンとし,各々UDF 4 種,一般品(手作り品)3 種の計7 種を用いた.官能評価は,食品開発および介護食の開発に携わっている成人健常者46 名を対象として,「食べやすさ」,「美味しさ」に関する項目各6 項目について評価した.物性測定は,テクスチャー特性のかたさ,凝集性,付着性について調べた.
お粥については,調製直後と60 分後の2 回官能評価を実施し,物性測定も20℃と45℃で行うことで,経時変化を検討した.官能評価の結果,UDF 製品が,鍋調製品および一般市販品よりも食べやすさに関する評価は高く,美味しさに関する項目では,手作り品(炊飯器・鍋)がUDFよりも評価が高かった.また,手作り品の経時変化は提供時に問題となるが,UDF は一般品よりも経時変化が小さいことが明らかとなり,時間を気にすることなく利用者が安心して食べられる食品であることが示された.
パンについては,食パン,ミルクパン,ペースト・ムース状と,形態別にUDF と一般品を比較した.官能評価の結果,UDF は食べやすさの評価では一般品よりも高い評価であった一方,美味しさの評価は一般品よりも低い傾向であった.食経験によって日常的に摂取している形態が好ましいと感じることから,食品のイメージを維持しながら食べやすさを改善することの重要性が示された.
テクスチャー特性のかたさは,パンにおいては食べやすさと相関が認められたが,お粥は官能評価結果と相関は認められなかった.UDF はかたさ以外にも,付着性や経時変化への影響,水分量など工夫されている点がみられることから,UDF の品質向上には物性測定に加えて官能評価の精度を高めていくことが重要であろう.