2023 年 27 巻 3 号 p. 171-178
【目的】嚥下造影検査(VF)において,固形物の食事提供の可否判断を目的とした,評価項目を4 項目に絞り,スコア化した評価基準(VF スコア)を考案した.今回,VF スコアの因子妥当性を検証した.
【対象と方法】対象は,2018 年2 月から2022 年2 月までに,当院でVF を行った193 例である.検査対象食物はゼリーを用いた.評価項目は,「 ① 咀嚼(咀嚼様運動)・舌の動き」,「 ② 口腔から咽頭への送り込み」,「 ③ 嚥下反射の惹起性」,「 ④ 嚥下による咽頭クリアランス」の4 項目で,それぞれ0 点(正常)~ 3 点(重症)でスコア化した.摂食の可否に影響する可能性があると考えられる11 項目とVF スコアの4 項目につき,摂食可能群と摂食不可群を従属変数として検討した.
【結果】検査後1 カ月以内に藤島の摂食・嚥下能力グレード5 以上の固形物の摂食が可能であった症例の割合(摂食可能率)は,VFスコアの4 項目すべてで,点数が高いほど低下する傾向にあった.摂食の可否に影響する可能性があると考えられる項目について単変量解析を行ったところ,性別とVF スコアの4 項目で摂食可能率に有意な差を認めた.この5 項目につき多変量解析を行ったところ,VFスコアの4 項目すべてが摂食の可否に対する独立した危険因子となった.
【考察および結論】今回考案したVF スコアは,4 項目すべてが固形物の摂食の可否に対する独立した危険因子となり,内的妥当性が確認された.VF スコアは簡易的ではあるが,一連の嚥下運動のすべてのフェーズを網羅しており,VF 結果の定量化に向けた評価基準の一つとなりうるのではないかと考えた.