日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
最新号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 神崎 憲雄, 松本 元美, 佐藤 みづき, 小松 紋未, 百木 朱音, 坂口 智恵美
    2023 年 27 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/14
    ジャーナル フリー

    【目的】嚥下造影検査(VF)において,固形物の食事提供の可否判断を目的とした,評価項目を4 項目に絞り,スコア化した評価基準(VF スコア)を考案した.今回,VF スコアの因子妥当性を検証した.

    【対象と方法】対象は,2018 年2 月から2022 年2 月までに,当院でVF を行った193 例である.検査対象食物はゼリーを用いた.評価項目は,「 ① 咀嚼(咀嚼様運動)・舌の動き」,「 ② 口腔から咽頭への送り込み」,「 ③ 嚥下反射の惹起性」,「 ④ 嚥下による咽頭クリアランス」の4 項目で,それぞれ0 点(正常)~ 3 点(重症)でスコア化した.摂食の可否に影響する可能性があると考えられる11 項目とVF スコアの4 項目につき,摂食可能群と摂食不可群を従属変数として検討した.

    【結果】検査後1 カ月以内に藤島の摂食・嚥下能力グレード5 以上の固形物の摂食が可能であった症例の割合(摂食可能率)は,VFスコアの4 項目すべてで,点数が高いほど低下する傾向にあった.摂食の可否に影響する可能性があると考えられる項目について単変量解析を行ったところ,性別とVF スコアの4 項目で摂食可能率に有意な差を認めた.この5 項目につき多変量解析を行ったところ,VFスコアの4 項目すべてが摂食の可否に対する独立した危険因子となった.

    【考察および結論】今回考案したVF スコアは,4 項目すべてが固形物の摂食の可否に対する独立した危険因子となり,内的妥当性が確認された.VF スコアは簡易的ではあるが,一連の嚥下運動のすべてのフェーズを網羅しており,VF 結果の定量化に向けた評価基準の一つとなりうるのではないかと考えた.

  • 菊池 美都, 清水 歩美, 清水 義貴, 井手 友美, 酒井 武則
    2023 年 27 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/14
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者や基礎疾患を有する患者における嚥下障害は,誤嚥性肺炎やフレイルのリスクとして重要である.一方で,高齢者の嚥下障害の有無による生命予後への影響を評価した研究は少ない.本研究の目的は,地域における様々な背景を有する高齢者の摂食嚥下障害の有無が生命予後に与える影響を明らかにすることである.

    【方法】2013 年1 月から2019 年12 月までの間に市立八幡浜総合病院に入院した患者で摂食嚥下機能低下が疑われ,嚥下評価を行った65 歳以上の患者838 名を対象とした.退院時の摂食嚥下障害臨床重症度分類の誤嚥有りを嚥下機能低下群,誤嚥無しを嚥下機能非低下群とし,年齢,性別,主たる入院病名,併存疾患,既往歴,入院時の血清アルブミン値,入院期間,介入期間,入院前の生活場所,退院後の生活場所,生命予後を比較検討した.生存率は Kaplan-Meier 法を用い,生命予後のリスク因子はCox比例ハザード回帰分析を用いて検討した.

    【結果】嚥下機能低下群(n=633)では,非低下群(n=205)に比して有意に死亡率が高く(log-rank,p<0.001),嚥下機能低下群の3 年生存率は36.8% であった.3 年後の死亡に関連した因子は,年齢(p<0.001,リスク比 1.06,95%CI[1.04,1.07]),男性(p<0.001,リスク比1.50,95%CI[1.21,1.85]),心疾患歴(p<0.043,リスク比 1.28,95%CI[1.01,1.60]),入院時の血清アルブミン値(p<0.001,リスク比 0.57,95%CI[0.49,0.65])嚥下機能低下あり(p<0.001,リスク比2.68,95%CI[1.98,3.71])であった.

    【結論】様々な疾患による高齢入院患者において,嚥下機能の低下は,長期的生命予後と関連した重要なリスク因子であることが示された.

短報
  • 井内 茉莉奈, 大久保 真衣, 杉山 哲也, 石田 瞭
    2023 年 27 巻 3 号 p. 186-194
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/14
    ジャーナル フリー

    【目的】嚥下機能障害患者には水分に適切なとろみを付与することが必要な場合があるが,とろみに対する患者の感覚的・心理的な理由で水分摂取量が減少してしまうことは避けなければならない.しかし,今まで患者視点からのとろみの官能評価についての検討は行われていない.そこで,市販飲料をそのまま摂取することが,患者のとろみに対する心理的負担を軽減させると想定し,市販飲料の粘性と官能評価に関する研究を行った.

    【方法】市販飲料35 製品の粘度およびLST 値を測定した.各市販飲料の温度を測定後,簡易トロミチェッカートロマドラー® を使用し,粘度測定とライン・スプレッドテストによる粘度測定を行った.

    【結果】乳製品はヨーグルト飲料の種類により薄いとろみ,中間のとろみ,濃いとろみに分かれていた.スープ類では,缶タイプの粘度は濃いとろみであり,カップタイプのコーンスープは薄いとろみと中間のとろみの間であった.粘度とLST 値の関係の検討を行ったところ,Spearman の順位相関係数により高い負の相関(p<0.01,R=-0.60)を認めた.官能評価は4 製品と薄いとろみの水で行った.官能評価では,薄いとろみが5 品目の中では一番高くなり,ヨーグルトドリンクが一番低かった.ヨーグルトドリンクと薄いとろみ(p<0.05),ヨーグルトドリンクとトマトジュース(p<0.05)に有意差を認めた.

    【考察】製品そのものに薄いとろみ程度の粘度が付与されているものもあり,とろみ調整食品を付与せずとも摂取が可能であると考えられる.各市販飲料の粘性に合わせた使用量,指導内容を提示したうえで飲みなれた飲料を摂取することで,患者の心理的負担は軽減し,安全で患者の嗜好に沿った食事を提供することが可能であり,ひいては患者のQOL 向上にもつながると考える.

臨床報告
調査報告
feedback
Top