日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
急性期入院患者における嚥下内視鏡検査時の随意咳,指示理解,意識レベルと経口摂取自立可否との関連
―兵頭スコアとの同時検討―
大嵜 美菜子山口 亮加賀 祐紀渡邉 良太
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2024 年 28 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

【目的】嚥下内視鏡検査(Video Endoscopic examination of swallowing: VE)時の兵頭スコアは,経口摂取自立可否の予測に用いられている.誤嚥予防や経口摂取自立には兵頭スコア以外にも随意咳,指示理解,意識レベルが重要とされているが,VE 時にそれら3 つを同時に検討した研究は見当たらない.そこで本研究では,初期VE 時の兵頭スコア,随意咳,指示理解,意識レベルと急性期転帰時の経口摂取自立との関連を明らかにする.

【対象と方法】研究デザインは縦断研究である.対象は2017 年5 月から2019 年4 月に当院急性期病棟に入院し,嚥下障害疑いでVE を行った231 人(男性114 人,平均82.4±8.3 歳)とした.目的変数は急性期転帰時の経口摂取自立可否とし,常食や軟食で3 食経口摂取者を自立群,嚥下調整食や経管栄養との併用または経管栄養のみの者を非自立群とした.説明変数は初回VE 時の兵頭スコア,随意咳可否,指示理解可否,意識レベルとした.調整変数は性,年齢,入院期間,入院からVE 実施までの期間,入院契機の原疾患,既往歴の有無としポアソン回帰分析にてCumulative incidence rate ratio(CIRR)と95% 信頼区間を算出した.

【結果】急性期転帰時の経口摂取自立者は84 人(36.3%)であった.経口摂取自立は,兵頭スコア(CIRR:0.607,95% 信頼区間0.373–0.988),随意咳(0.468,0.289–0.757)と有意な関連を示した.

【結論】急性期転帰時の経口摂取自立を予測する因子として,兵頭スコア以外にも随意咳可否が独立して関連していた.経口摂取自立可否の予測には,兵頭スコアに加え随意咳可否の評価が重要かもしれない.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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