日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
モストグラフを用いた食後の呼吸抵抗の増加は摂食嚥下障害の関与を疑う
荒生 剛井上 純人髙橋 敬冶木村 友美今井 弥生児玉 俊恵佐藤 由紀青木 望
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2024 年 28 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

 【背景】モストグラフは強制オッシレーション法を応用して開発された測定機器であり, 呼吸抵抗およびリアクタンスを測定できる.我々は既往歴に誤嚥性肺炎のある多くの症例で,モストグラフで測定した呼吸抵抗が食後に増加していることを発見した.その現象の原因を嚥下内視鏡検査を用いて検討した.

【方法】対象は誤嚥性肺炎群23 人とコントール群17 人とした.摂食での嚥下内視鏡検査と内視鏡検査前後のモストグラフ検査を行い数値の変化をAverage で検討した.

【結果】嚥下内視鏡前と比較した嚥下内視鏡後の5 Hz の呼吸抵抗の変化量DR5(cmH2O/L/s)は,誤嚥性肺炎群でコントロール群と比較して有意に高値だった[中央値0.37(最小値-0.46,最大値1.13)vs. 0.29(-1.64,0.39),p<0.001].誤嚥性肺炎群において,DR5 は咽頭残留の指標(YPR-SRS)の平均値や喉頭侵入・誤嚥スケール(PAS)の平均値とは相関せず,唾液のPAS(S-PAS)の平均値と有意な正の相関を示した(Spearman の順位相関係数ρ=0.453,p=0.030).また,誤嚥性肺炎群+コントロール群において,DR5は嚥下障害の指標と有意な正の相関を示し,YPR-SRSの平均値(ρ=0.527,p<0.001),PASの平均値(ρ=0.502,p<0.001),S-PAS の平均値(ρ=0.550,p<0.001)であった.

【結論】モストグラフにおける食後の呼吸抵抗の増加は,摂食嚥下障害とくに食事中の唾液の喉頭侵入・誤嚥の評価に有用な可能性がある.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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