日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
舌突出が発声時の呼気鼻漏出と鼻腔共鳴率に及ぼす影響
阿志賀 大和田村 俊暁倉智 雅子
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2024 年 28 巻 2 号 p. 83-89

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抄録

 口腔,鼻腔,咽頭腔は共鳴腔として重要な働きを有し,鼻腔での共鳴の有無の調整を行う軟口蓋が十分に機能しない場合,音の明確な作り分けが困難となる.発話の実行過程に関して重要な機能を果たす軟口蓋の動きにおいて,下顎の位置を一定にしつつ,舌の位置を変化させた場合の軟口蓋への影響は十分に検討されていない.そこで,下顎の位置を一定としたうえで挺舌が軟口蓋の運動にどのような影響を及ぼすかを検証すること,鼻腔共鳴率と実際の呼気鼻漏出の関連の程度についても検証することを目的に本研究を行った.若年健常成人女性13名(21.7±0.9歳)の結果を使用し解析を行った.最大開口のみ(開口条件)と最大開口に加え最大限の挺舌をさせた条件(開口挺舌条件)の2 条件で,母音/a/ の持続発声を3 回ずつ行わせ,鼻息鏡で測定した左右のそれぞれの呼気鼻漏出の値,ナゾメーターⅡ 6450 を使用し求めた鼻腔共鳴率のmean,min,max,start の値を用い検討した.その結果,start の値で,開口挺舌条件の方が開口条件に比べ,鼻腔共鳴率が有意に大きかった(r=0.562,p<0.05)が,その他は有意差を認めなかった.呼気鼻漏出と鼻腔共鳴率の相関では,開口条件にてmean とmax にて有意な相関を認めたものの,その他の条件では有意な相関を認めなかった.下顎の位置を一定にした状態で舌の位置を変化させた場合に,鼻腔共鳴率に影響を及ぼすことが示唆された.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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