日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
『発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018』の活用の現状と課題
小城 明子水上 美樹弘中 祥司藤谷 順子
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 28 巻 2 号 p. 99-105

詳細
抄録

 策定から約5 年が経過した『発達期嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018』(以下,『発達期嚥下調整食分類2018』)の活用における課題および当分類の在り方を検討することを目的に,給食,栄養・食事相談,他施設との情報共有への活用状況等を調査した.対象は,重症心身障害児者施設136 施設および独立行政法人国立病院機構の重症心身障害児病棟を有する病院75 施設とし,アンケートにより回答を得た(有効回答率34.6%).基本となる給食への活用は,有効回答施設の38.4%と少なかった.給食に活用していない施設の半数以上が中途障害者向けの『嚥下調整食分類2021』を活用していた.それを当分類を活用しない理由に挙げていたが,両分類を精査した結果かどうかは明らかにできなかった.『発達期嚥下調整食分類2018』の導入を積極的に検討しなかった可能性も考えられた.当分類の活用を促すためには,対象者やねらいを再度周知し,実践例をもとにした有用性をアピールすることが重要であると考える.また,導入にあたり,出来上がりや選択,調理方法などに関する不安が阻害要因となっていることも示唆されており,補助資料や研修の充実が必要と考えられた.給食で活用されていても,食事・栄養相談や他施設との情報共有に活用している施設は少なかった.喫食者の施設間の移動が少なく情報を共有すべき機会が少ないことが推察された.喫食者の栄養上の課題として,経口摂取量不足や限られた食物の摂取によるエネルギーやたんぱく質,水分の摂取量不足,体重減少や低栄養が多く挙げられた.給食への活用の有無による栄養上の課題には違いが見られず,当分類の対象者においても嚥下調整食と並行して補助栄養を検討する必要があることが明らかとなった.

著者関連情報
© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事 次の記事
feedback
Top