日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
嚥下おでこ体操における表面筋電図を用いた視覚的フィードバックの有用性
志村 栄二櫻井 優太阿志賀 大和
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2024 年 28 巻 3 号 p. 141-150

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抄録

【目的】舌骨上筋群の筋力増強訓練の一つに嚥下おでこ体操がある.額に手を当てて抵抗を加えながら頭頸部屈曲を行う簡便な手技であるが,頸部の角度や力加減は実施者に委ねられるので,十分な筋活動が得られていないことがあるかもしれない.頸部の運動に伴う筋収縮の情報が対象者自身に feedback (以下, FB)されることで,これらの欠点が改善される可能性があるものの,これまで検討されていない.本研究では嚥下おでこ体操実施時の表面筋電図による視覚 FBの有用性を検討した.

【方法】実験参加者の健常若年者 32名(24.0±3.6歳)を視覚 FB有り群と FB無し群に分けた.測定課題は両群ともに嚥下おでこ体操とし,①練習,②第一試行,③第二試行,④第三試行( 15分後),⑤第四試行(一週間後)の順に進めた.この過程の ③第二試行において, FB有り群は表面筋電図による FBを併用した.嚥下おでこ体操の 1回あたりの計測時間は 5秒とし,各試行で合計 3回計測した.測定装置は表面筋電図を使用し,被験筋は利き手側の舌骨上筋群とした.筋電図波形の解析区間は,運動開始後の 1秒から 4秒までの 3秒間とした.各試行の代表値は,算出された 3回分の平均振幅をさらに平均した値とした.

【結果】分析対象は両群 15名となった.試行回を要因とする単純主効果の検定では,FB有り群において有意差が認められた.さらに,試行回ごとの多重比較では,第二,第三,第四試行の平均振幅は第一試行に比べて有意な増加を認めた.一方で,FB無し群の単純主効果には有意差は認められなかった.

【結論】嚥下おでこ体操を実施する際に併用した表面筋電図によるリアルタイム FBは,舌骨上筋群の筋電図振幅を増加させるための有用な手段になることが明らかになった.また,その効果は 1週間後も保持されることが示唆された.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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