日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
某市の児童発達支援事業所における食事と口腔機能・衛生に関する課題
―保護者アンケート調査より―
佐藤 夏奈藤澤 和子髙橋 圭三櫻井 晶
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 28 巻 3 号 p. 151-160

詳細
抄録

【目的】児童発達支援事業所は増加傾向にあり,食事の支援や口腔機能の改善,口腔衛生管理の指導も児童発達支援事業の一つに属すと考えられる.本研究の対象とした某市には,児童発達支援事業所が一か所に留まり,出生直後からの発達支援を大学病院などから引き継ぎ,地域の病院と連携しながら継続的に支援を実施するためには,児童発達支援事業所に寄せられる地域的なニーズが高いと考えた.そこで児童発達支援事業所を利用する子どもの食事や口腔機能と衛生状態の課題と,保護者のニードを検討することとした.

【対象および方法】某市の児童発達支援事業所を利用する子ども( 60名)の保護者を対象にアンケート調査を依頼した.アンケート内容は基本情報,食事の様子,口腔機能と衛生状態,食事や口腔に関する保護者の困りごとと食事指導の希望とした.統計解析はアンケート結果から従属変数を「食事指導の希望」の有無とし,それ以外の項目を独立変数としてカイ二乗検定を行った.

【結果】アンケート結果において回収率は 61.7%,平均年齢 4.9±1.2歳,性別は男性 79.4%女性 20.6%であった.食事指導を受けた経験がある 29.4%,食事の際に使用している椅子は「子供用椅子」 70.6%であった.口を開けていることが多いかは「開けている」58.8%であり,歯科健診で指摘を受けたことがあるか「はい」 41.2%であった.食事や口に関する困りごと「あり」 67.6%であり,食事指導の希望「あり」 64.7%であった.統計結果の「食事指導の希望との関連」では,子供用椅子の使用「あり」(p<0.05),食事や口に関する困りごと「あり」(p<0.05)に食事指導の希望「あり」が有意に多かった.

【結論】某市の児童発達支援事業所は地域的なニーズが高く,食事場面や口腔に関連する問題,保護者の困りごとが多かった.そのため早期から専門職種が関わり,子どもの状態を適切に評価し,食事の提供方法や口腔周囲筋の機能改善などについて支援することが重要である.

著者関連情報
© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事 次の記事
feedback
Top