日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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症例報告
冷凍ゼリーによる嚥下訓練が有用であった Wallenberg症候群の一例
小山内 奈津美森永 伊昭工藤 佳奈
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2024 年 28 巻 3 号 p. 176-182

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抄録

Wallenberg症候群の咽喉頭感覚の低下は,経口摂取開始の遷延を招く要因の一つと考えられ,重症例や発症早期例では ice chip swallowや少量の水分等を用いた訓練であっても適応外となることがあり,我々が知る限り有用な直接訓練方法は多くはない.今回,Wallenberg症候群により嚥下反射惹起不全と食道入口部(upper esophageal sphincter:以下, UES)開大不全を呈した患者に対し,スライス状の冷凍ゼリーによる直接訓練(以下,冷凍ゼリー訓練)を発症早期に実施し,嚥下機能の改善に有用であった事例を経験した.冷凍ゼリー訓練とは,嚥下反射惹起不全や遅延があり,コード 0jやコード 0tの経口摂取が困難な重度嚥下障害患者に実施する当院特有の訓練方法である.冷凍ゼリー訓練は,偽性球麻痺患者の嚥下反射惹起遅延に対して有用であることが報告されているが,Wallenberg症候群による嚥下反射惹起不全にも有用であり,冷凍ゼリーによる知覚入力の増強が孤束核―嚥下のパターン形成器(Central Pattern Generator)―疑核を介する嚥下反射の増強に有用だった可能性があった.一側嚥下や座位での嚥下前頸部回旋による直接訓練やバルーン訓練は, UES 開大不全に対し有用であった. Wallenberg症候群においては,嚥下機能検査や症状に応じた適切な訓練を発症早期より実施することで,誤嚥性肺炎予防と早期機能回復の促進に寄与し,経口摂取開始の遷延予防につながる可能性が示唆された.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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