1999 年 3 巻 2 号 p. 16-20
食品の物性に影響する因子として圧縮方法,プランジャーの形態,クリアランスなどが指摘されているが,圧縮速度による物性の変化に関する検討は少ない.そこで現状の測定機器の最高速度と最低速度による破断特性の変化を検討した.その結果,破断応力では5食品すべて,破断ひずみ率では5食品中2食品,初期弾性率では1食品について統計学的な有意差をもって,それぞれの値が異なっていた.したがって圧縮速度は食品の物性値を大きく変えることが明らかとなった.またヒトの咀嚼運動速度は測定機器の速度の約10倍であるため,現状で示されている食品の物性とヒトが咀嚼運動時に感じている食品の物性とは大きく異なることが明らかとなった.そのため咀嚼運動と食品の物性との関連を検討する場合には,ヒトの咀嚼運動に近似した測定条件を持つ機器での物性の測定とそれに基づく食品分類が必要と考えられた.