日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
ビデオ内視鏡を用いた健常例の嚥下反射運動の観察
藤井 航馬場 尊才藤 栄一柴田 斉子小野木 啓子横山 通夫
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2004 年 8 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

目的:本研究の目的はビデオ内視鏡(Videoendoscopy;VE)を用いてWhiteout前後の正常な喉頭運動の見え方を,咀嚼を有する嚥下(咀嚼嚥下)を含めたいくつかの嚥下様式について把握することである.

対象・方法:健常成人7名において,嚥下様式を空嚥下,50%バリウム液5mlの命令嚥下と咀嚼嚥下,バリウム含有コンビーフ8g咀嚼嚥下の4種,内視鏡先端位置を高位,低位の2種に設定し施行した.各嚥下様式につき高位および低位でそれぞれ3施行ずつおこない,技術上の理由から4施行を削除,合計164施行での検討を行った.観察はWhiteout,喉頭蓋運動,披裂部運動について行った.

結果:目的によって内視鏡先端の位置を変える必要があるものの,Whiteout前後の喉頭蓋運動,披裂部の運動の観察は約7割から9割で可能であった.高位は軟口蓋挙上の間接的な観察と喉頭蓋の復位の観察に適していた.低位は喉頭蓋飜転の開始の同定と,披裂部の運動の観察に適していた.喉頭蓋運動の観察のされ方は被験者により異なっていた.咀嚼嚥下ではWhiteout,喉頭蓋運動開始の直前において披裂間切痕が閉鎖していない例が多かった.

考察:VEを用いての喉頭蓋運動の観察のされ方は被験者により特徴があり,軟口蓋運動とのタイミングが個体間で異なっている可能性が示唆された.また,VEを用いた嚥下の観察は,咀嚼の有無により大きな影響は受けず一定の観察が可能で,披裂間切痕の閉鎖が咀嚼により遅れることを示したなど,咀嚼嚥下を含めた嚥下動態研究への応用の可能性が示された.今後,嚥下造影などとの同期施行で新たな知見が得られる可能性が示された.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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