日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
総説
摂食・嚥下障害者に適した「高齢者ソフト食」の開発
黒田 留美子
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2004 年 8 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

従来,摂食・嚥下障害のある高齢者に対して,短絡的にきざみ食が提供されてきた.しかしきざみ食は,咀嚼機能の低下した症例には適しているかもしれないが,嚥下障害のある症例では,誤嚥のリスクが高いばかりでなく,食物残渣によって口腔内が不潔になることが多い.またきざみ食は,何よりも・食事を楽しむものとは言いがたく,喫食率が低いことより栄養状態の悪化も懸念される.そこで著者らは,摂食・嚥下障害のある高齢者にも安心でおいしく食べられる食事を開発し,「高齢者ソフト食」と命名した.高齢者ソフト食は,口に取り込みやすく,咀嚼しやすく,口腔内での食塊形成が容易で移送しやすく,さらに嚥下しやすい,という特徴を有しており,摂食・嚥下の軽度障害者から,きざみ食が提供されてきた対象者にまで,幅広く適応となる.その安全性は嚥下造影で確認できており,また臨床的に栄養状態の改善も認められた.きざみ食に代わる新しい食形態として高齢者ソフト食を開発したことによって,著者らの施設ではきざみ食は一切提供しなくなった.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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