日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
臨床ヒント
病棟・ICUに常勤の歯科衛生士を加えた口腔ケアシステムの導入
平岡 有香松下 文彦福與 悦子高橋 福佐代小栗 聖薗田 直志
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 8 巻 2 号 p. 186-190

詳細
抄録

【口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に有効であり摂食・嚥下の機能訓練にもつながるといわれている.しかし,煩雑な看護業務の中では,口腔ケアに十分な時間をかけることは難しい.そこで,当院では口腔内のよりよいケアと管理を目的に平成10年より歯科衛生士が口腔ケアに参加している.今回,当院でのシステム紹介と,歯科衛生士を加えたチームアプローチによる口腔ケアが有効に機能し始めている現状について報告する.現在までの6年間に歯科衛生士が介入した患者数は772人であり,1日あたり平均して30~40人のケアを実施している.入院直後から退院までを通して,歯科衛生士が中心となり,時間をかけた口腔ケアを行い,その他,入院中の口腔内の清潔維持と退院後のケアの継続に向けて,家族指導,退院指導を行っている.また,当システムでは,細菌培養検査を実施し,患者の口腔環境の把握と,院内感染の予防に役立てている.歯科衛生士が口腔ケアに参加し,より時間をかけた口腔ケアが可能となり,著しく汚染の見られる患者は減少した.特に急性期においては,早期から介入することで,口腔内の清潔と健康な粘膜の維持につながっている.細菌培養検査においても,健康な粘膜の維持は病的な環境に定着しやすい菌の増殖を防ぐ有効な手段であり,このことからも早期からの徹底した口腔ケアが必要と思われる.また,慢性期の状態においては,積極的に家族と関わりをもち,指導を行うことで,家族の口腔ケアに対する関心も高まり,口腔内の清潔につながっている.歯科衛生士が病棟に常駐することで,ケア時間の制約が少なく,家族と関わる時間が十分にもてるため,患者の状態や家族の介護力に合わせたプランをたてやすい.患者個人に合わせた方法を,時間をかけて繰り返し指導することで余裕をもって手技が習得される.また,在宅での口腔ケアにも結びつき,退院後の口腔内の清潔にもつながると考える.

著者関連情報
© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事
feedback
Top