日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
ヒストリカルレビュー
リハビリテーション医学領域
才藤 栄一
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2005 年 9 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

わが国における摂食・嚥下リハビリテーションは1990年代になって急速に発展し,1995年の日本摂食・嚥下リハビリテーション学会設立により加速された.会員数は直線的に増加し,2004年には4,265名に達し,内訳は,言語聴覚士,歯科医師,看護師,医師,栄養士,歯科衛生士など学際的である.本邦の最近10年の摂食・嚥下関連論文は和文3000本,英文170本であり,リハビリテーション関係の論文は本学会誌発刊後,急速に増加している.その研究は,生理・解剖では,咀嚼・嚥下関連の基礎データが整理されつつあり,臨床病態生理では,嚥下造影や内視鏡を用いた嚥下動態の詳細が検討され,口腔・咽頭構造の臨床的意義や咀嚼嚥下複合体が理解されつつある.嚥下と呼吸の関係も明確になりつつある. 評価・診断では,スクリーニング法の開発と基準化,新評価法の開発など,臨床に即した発展があった.体位の病態生理学的理解が進んだ.また,新しい嚥下障害食も開発されてきた.経管法では,間欠的経管栄養法が追試され,バルーン拡張法の応用が報告されて確立されつつある.その他,誤嚥性肺炎の発現要因に関する病態の理解と口腔ケアの有用性の明確化,神経難病の嚥下障害の総合的理解,各種病態の予後が明らかになりつつある.このような状況の中,対応の標準化が求められている.つまり,標準的評価尺度の整備とそれを用いての効果の証明が今後の課題である.

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© 2005 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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