抄録
本研究は2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う大津波によって壊滅的な被害を受けた東北・北関東の太平洋沿岸地域の都市や集落の被害の実態を地域コミュニティの観点から捉え、復興時のまちづくりの過程において、地域コミュニティが津波に強い社会として再生していくための方法の探求を目的としている。特に今後の防災教育、人材育成のために広く継承されていくことを主眼に置き、被災前の街や集落の復元模型を制作し、それを用いて被災前・被災時の証言を市民から収集し、立体的に整理・位置づけを行う方法を考案している。地域の記憶や津波時の体験をヴィジュアルなかたちで盛り込んだ復元模型は、特に子供達にとって地域文化・津波体験を継承していく上で有効な手段である。同時に市民にとっては、地域の空間を客観的に捉え直すことにもなり、これからはじまる復興事業において、市民自身がより適切な判断や話し合いを行う上での記録としても重要である。