日本災害復興学会論文集
Online ISSN : 2435-4147
2 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 復元模型を活用した気仙沼市でのワークショップを通して
    槻橋 修
    2012 年2 巻 p. 1-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    本研究は2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う大津波によって壊滅的な被害を受けた東北・北関東の太平洋沿岸地域の都市や集落の被害の実態を地域コミュニティの観点から捉え、復興時のまちづくりの過程において、地域コミュニティが津波に強い社会として再生していくための方法の探求を目的としている。特に今後の防災教育、人材育成のために広く継承されていくことを主眼に置き、被災前の街や集落の復元模型を制作し、それを用いて被災前・被災時の証言を市民から収集し、立体的に整理・位置づけを行う方法を考案している。地域の記憶や津波時の体験をヴィジュアルなかたちで盛り込んだ復元模型は、特に子供達にとって地域文化・津波体験を継承していく上で有効な手段である。同時に市民にとっては、地域の空間を客観的に捉え直すことにもなり、これからはじまる復興事業において、市民自身がより適切な判断や話し合いを行う上での記録としても重要である。
  • 阪神・淡路大震災における神戸市長田区の事例
    田中 正人, 小川 知弘
    2012 年2 巻 p. 9-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    本稿は,阪神・淡路大震災による被災市街地を対象に,住宅及び居住実態の変容過程を追跡し,復興都市計画事業が地域にもたらした影響を分析する。神戸市長田区を事例に,国勢調査を用いた統計分析を行う。主な結果は以下の通り。1)総じて長屋建の住宅被害が大きいが,その残存率の高い街区ほど震災時からの居住継続率も高い。2)人口回復は特に区画整理事業区域で遅れており,震災前の5割に満たない街区が37%を占める。3)全壊率の高さは人口回復率を低減せず,逆に人口の受け入れ要因となる側面がうかがえる。ただし区画整理区域のうち,元々老朽化・高齢化が進んでいた街区は人口がより戻りにくい傾向にある。自営層・ブルーカラー層にとっての就業の場や長屋建のストックが再生されないことが背景にあるとみられる。4)復興事業適用に際しては,老朽化や被災度,基盤整備状況だけでなく,年齢構成,住宅ストック構成,就業形態等の居住実態を考慮すべきである。
  • 岩手県沿岸部聴取り調査からの考察
    金子 由芳
    2012 年2 巻 p. 19-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の被災特性として、住宅被災のみならず生業被災が顕著であるが、復興計画の遅れから生業再建が長期に停止し、この間をつなぐ生業支援ニーズは強い。しかし阪神淡路大震災以来の現行の被災者支援制度は都市型災害対応であり、地方型災害の生業支援ニーズに対応しえていない。一方、今次震災ではグループ補助金、特別融資、二重債務解消スキームなどの譲許性の強いアドホックな公助措置が導入されたが、筆者が継続的に行なった被災地聴取り調査によれば、これら諸措置は「産業復興」の文脈で中堅・大手グループや間接被災者に向かい、零細事業者のニーズに届かぬものとなっている。零細事業者向けの数少ない措置として仮設施設無償提供事業があるが、関連措置が有機的にリンクしていない。今後、被災事業者個々のニーズに寄り添う仮設事業への資金支援、また将来へ向けた地域産業復興構想に事業計画を連結させてゆく高度なアドバイス機能が求められよう。
  • 東北地方太平洋沖地震被災地における小地域レベルの居住関係のクロスデータの推計
    山田 美由紀, 糸井川 栄一, 佐藤 隆雄
    2012 年2 巻 p. 30-39
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    きめの細かい住宅復興施策を検討するためには、住宅被災世帯の状況をできるかぎり詳細に把握する必要がある。本研究では、東北地方太平洋沖地震被災地である岩手県沿岸地域の自治体を対象に、住宅被災世帯の推定の前提となる住宅居住世帯の状況を明らかにするため、宮古市、大船渡市、陸前高田市、釜石市を対象に町丁目レベルの領域における居住関係のクロスデータを推計し分析するとともに、大船渡市を対象に住宅被災世帯の推定をケーススタディしたものである。
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