抄録
本稿は,阪神・淡路大震災による被災市街地を対象に,住宅及び居住実態の変容過程を追跡し,復興都市計画事業が地域にもたらした影響を分析する。神戸市長田区を事例に,国勢調査を用いた統計分析を行う。主な結果は以下の通り。1)総じて長屋建の住宅被害が大きいが,その残存率の高い街区ほど震災時からの居住継続率も高い。2)人口回復は特に区画整理事業区域で遅れており,震災前の5割に満たない街区が37%を占める。3)全壊率の高さは人口回復率を低減せず,逆に人口の受け入れ要因となる側面がうかがえる。ただし区画整理区域のうち,元々老朽化・高齢化が進んでいた街区は人口がより戻りにくい傾向にある。自営層・ブルーカラー層にとっての就業の場や長屋建のストックが再生されないことが背景にあるとみられる。4)復興事業適用に際しては,老朽化や被災度,基盤整備状況だけでなく,年齢構成,住宅ストック構成,就業形態等の居住実態を考慮すべきである。