抄録
本論文では復興主体によるリスク認知の違いから、復興への考え方の齟齬が生じているのではないかという視点のもと、東日本大震災で被災した2つの地区事例をもとに住民グループによる地域復興に向けた選択の過程を調査・分析した。選択行動とその要因をリスク回避選択として分析を行い、復興過程における将来の災害に対する安全性の確保と地域再建について考察を行った。住民グループが地域社会の継続のために災害によって生じている、或いは助長されると考えている問題を将来の安全性も含み包括的に捉え地域再建のためのリスクを減らそうと行動を行っていた。一方で復興事業の実施主体である公的機関の施策は津波防御に偏ったかたちで進んでおり、住民グループにとっては防潮堤建設により生じる地域再建に対するリスク認知度が将来の浸水リスク認知度を上回っていることを明らかにした。また持続的な社会の再建のためには、地域性に応じた安全性確保手段の検討が必要であるとの課題を示した。