日本ソーシャルデータサイエンス学会論文誌
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Print ISSN : 2432-5279
原著論文
国政選挙における各政党 ・ 候補者の政策的主張の違いと死票の分布の可視化
新原 俊樹甲斐 尚人
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2024 年 8 巻 1 号 p. 10-21

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抄録
2021年と2022年に実施された2回の国政選挙の際に候補者が回答したアンケートの結果に基づき,主成分分析とクラスター分析によって,各政党・候補者の政策的な主張の違いを可視化した.分析の結果,2021年の第49回衆議院議員総選挙では,各候補者の政策的な位置関係に基づき4つのクラスターが抽出された.主成分に沿って各クラスターの重心位置に注目すると,第1,第2主成分の軸上で重心の位置に違いがみられた.また,2022年の第26回参議院議員普通選挙では5つのクラスターが抽出され,第1~第3主成分の軸上で重心位置が異なる結果となった.この回の選挙から集計に加えた「参政」「幸福」の候補者が他の政党と政策的な立場を異にしていたため,クラスターの数や重心位置に差がある主成分軸が増えたものと考えられる.一方,2回の選挙を通じて政党やクラスターの間で財政健全化の問題に対する姿勢の差別化は図られなかった.次に,2回の選挙の前後で,複数の政党で候補者の分布の重心に変化がみられた.アンケートの集計結果から,特に「国民」「維新」「N党」の3党内で防衛力の強化や非核三原則の見直しを主張する候補者が増えたことによると考えられる.さらに,各候補者への投票数を政策的な立ち位置に合わせて積算し死票の分布を可視化したところ,与野党間死票率に大きな差があることが明らかになった.これらの分析結果は,投票を棄権している有権者に各政党の政策的主張の違いを分かりやすく説明するだけでなく,死票の分布も併せて示すことで,自身の票を国政に反映するための戦略的な投票行動の検討を促す効果が期待できる.本研究が有権者の政治や選挙に対する関心を喚起し,投票率の回復に貢献するためには,今後の国政選挙においても引き続き,本研究による成果を継続的に発信していく必要がある.
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