日本透析医学会雑誌
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原著
ダブルルーメンカテーテルにおける血管壁へばりつき現象に関する研究
―へばりつき発生因子の実験的検討―
武藏 健裕
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2007 年 40 巻 10 号 p. 851-858

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抄録

血液浄化療法におけるダブルルーメンカテーテル (DLC) 使用時の主要な問題点の一つに脱血孔が血管壁へ付着する「へばりつき現象 (へばりつき)」がある. 本研究では, へばりつきを発生させる要因を明らかにするため, 血管を模擬したセルロースチューブ内に模擬血液を灌流させDLCを挿入し, DLC先端部のセルロースチューブへのへばりつきを観察した. その結果, 実験に用いた10種類のDLCのうち, 脱血孔がDLC円周の片側に集中している8種類のDLCでへばりつきが観察された. 特にDLC円周の1/3周以下に脱血孔が集中する5種類のDLCではへばりつきが発生しやすかった. 一方, 脱血孔が全周に位置する2種類のDLCではへばりつきは観察されなかった. そこで, 後者のDLCの脱血孔を人為的に閉塞させていき, 開存脱血孔の数・配置とへばりつきとの関係を調べた. 脱血孔が6つあるDLCの場合, 開存脱血孔数を3箇所に減らすと初めてへばりつきが認められた. 開存脱血孔数が2箇所の場合, 開存脱血孔間のDLC円周方向での距離が短くなるにつれて, へばりつき発生率が高くなり, 2箇所の開存脱血孔がDLCの長軸方向に位置している場合に最も高くなった. この2つの開存脱血孔を1箇所に減少させると, へばりつき発生率はさらに上昇したが, 模擬血液が脱血孔を流れる抵抗も大きく増加した. また, へばりつきが発生した8種類のDLCでは, DLC内流量 (脱血流量) は増加させるほど, セルロースチューブ内流量 (静脈流量) は減少させるほど, へばりつき発生率が上昇した. これらの実験結果から, 脱血孔のDLC円周方向での偏在, および脱血孔での血流抵抗の上昇, 脱血流量の増加, 静脈流量の減少がDLCへばりつき現象の発生要因であることがわかった.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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