日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
高血糖昏睡が遷延し脳MRIにて大脳基底核病変がみられた糖尿病血液透析患者の1剖検例
佐藤 かすみ岩崎 美津子伊東 由紀枝三枝 信若狭 幹雄
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 40 巻 12 号 p. 1063-1069

詳細
抄録

55歳, 男性. 透析歴1年3か月. 糖尿病性腎症のために当院外来にて血液透析施行していた. インスリンを打たずに飲酒を続けた後, 突然意識障害をきたし当院搬送. 受診時血糖1,086mg/dL, 脳CTにて異常所見を認めなかったことから, 高血糖昏睡の診断にて直ちにインスリンと補液による加療を開始したが, 意識状態は回復しなかった. 入院翌日の脳MRIでは異常所見は認めなかったが, 1か月半後の再検ではT1強調画像で両側基底核に高信号が出現し, また脳全体の萎縮がみられた. 第79病日に死亡. 剖検の結果, 大脳基底核に慢性変化を伴う虚血性変化を認め, さらに大脳全体にも微小な虚血性変化巣が多数みられた. 高血糖を伴い不随意運動を呈する患者の中には脳MRIで基底核にT1強調画像での高信号がみられる症例があるが, 通常は, 意識障害は伴わず, 急性一過性で予後良好である. 本例では, 高血糖に加え, 飲酒, 腎性貧血や血液透析などの関与により重篤な経過を辿ったと考えられた.

著者関連情報
© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top