抄録
67歳の透析アミロイド股関節症を発症した透析歴22年の女性透析患者を経験した. 1999年1月頃より発熱・左臀部痛・歩行困難が出現. 股関節X線・MRIにて両側大腿骨頭壊死が疑われたため, 当院整形外科にて左側人工骨頭置換術を施行し軽快退院した. 組織学的にCongo-red染色および抗β2-microglobulin (β2-MG) 抗体陽性よりアミロイド股関節症と診断した. この症例の経験から, 当院維持透析中で透析歴20年以上の女性患者を対象として股関節病変のスクリーニングをMRIにて行った. 本症例を含む12症例中8例にアミロイド骨嚢胞, 2例にアミロイド股関節症, 1例に関節液貯留を認めたが, 呈示症例以外は無症状であった. 血清β2-MGは所見を認めた群で有意に低値であった (28.6mg/L vs. 41.4mg/L ; p=0.0339). 慢性腎不全患者の生命予後向上に伴い股関節病変は増加することも予想され, 長期透析合併症の一つとして留意する必要があると考えられる.