日本透析医学会雑誌
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原著
透析患者の全体液量の計算法
二ノ宮 日出世高田 三千尋豊田 貫雄末友 祥正向井 隆一郎
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2007 年 40 巻 5 号 p. 409-415

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抄録

人体の体液量は各種の物質を用いて測定する方法がすでに確立しているが, これらの方法を透析患者に利用するのは不便である. また, ウレアスペースの測定については山下らの報告があるが, われわれは血液透析患者のウレアスペースを, 血液透析中のBUN濃度とウレアクリアランスのみから求められないかと考え研究を行った. 血液透析をすることにより, ウレアスペースは動力学的に2つのコンパートメントに分かれるが, 2つのコンパートメントが動力学的に等しくなるとき, 静力学的には1コンパートメントと考えられるので, この点をみつければ真のウレアスペースを求めることができる. この考え方で, 数学的に2つのコンパートメントが動力学的に等しくなる点を理論的に求めた. そして, 実際の計算では, BUN濃度の測定誤差対策として修正移動平均 (RMA) をとりBUN濃度の近似関数に4次式を用いてウレアスペースを求めた. こうして得られた結果が合理的なものであるかどうかを検証するためNAAP法の正常値と仲里, 小川らの透析後の透析患者に重水を投与して得られた総体液量との比較をしてみたところほぼ同様の値を示した. また, 同一被検者について2回以上の検査を行った症例では再現性のある値を得ることができた. われわれは, 独自の考えに基づいて, 透析患者のウレアスペースを求める方法を作成した. この方法は患者負担が少なく, また再現性にも優れ, 精度も高く臨床応用可能な全体液量の計算方法と考えられる.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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