日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
原著
バイオ人工糸球体開発における内皮細胞の透過性亢進技術の検討
Vu Duc Minh横山 トン オン澤田 佳一郎藤村 聡澤谷 朝子巽 亮子都川 貴代比留川 喬金井 厳太宮本 嘉泰田中 礼佳鈴木 大角田 隆俊斎藤 明
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 41 巻 12 号 p. 851-860

詳細
抄録

中空糸モジュール内面にヒト内皮細胞が単層を形成し,抗血栓性であるとともに高透過性能を合わせ持つバイオ人工糸球体を開発するためには,内皮細胞が糸球体内皮細胞のように大きなfenestrae径を有することが必要である.私どもは,actinフィラメントがfenestrae径に関与し,その重合化の阻害剤であるcytochalasin B(CyB)を適量投与することにより,内皮細胞の透過性を亢進させることができるかを検討した.ラット糸球体内皮細胞(RGEC)とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をTranswellで培養し,培養に20,30,40,50μg/mLのそれぞれの濃度でCyBを添加し2時間のみ処理し,CyB非含有培地でさらに培養し,直後,3日,7日目に走査電子顕微鏡(SEM)により15,000倍で観察すると同時に,130mmHgの静水圧下で限外濾過量を測定した.また,CyBの投与量と細胞生存の関連を検索するために,RGECとHUVECの培養液中にCyB 10,30,50,70μg/mLを4時間添加しCell Counting Kit-8を用いて測定した.さらに,血小板リッチ血漿をCyB処理,非処理のRGEC,HUVEC接着ならびに非接着培養皿充填し,血小板の接着を観察した.CyB非処理HUVECでは,15,000倍のSEMにおいてfenestraeは検出されず,20,30,40,50μg/mLのCyB処理により用量依存的にfenestrae径と数の増加を認めたが,20,30,40μg/mLのCyB処理で直後,4日,7日と経過するにつれてfenestrae径は小さくなった.50μg/mLのCyB処理においてfenestrae径の拡大と限外濾過量は最もよく維持された.また,細胞長径に沿って多数認められたactinマイクロフィラメントは,CyB処理後消失してactinが細胞質内に点状に分散する形で存在していた.CyB濃度10μg/mLから50μg/mLで有意な細胞活性の低下は認められず,70μg/mLにより両細胞で有意な細胞の生存率の低下が認められた.細胞非接着のfibronectin被覆培養皿には多数の血小板の接着が認められたが,CyB処理ならびに非処理のRGEC,HUVEC接着培養皿には血小板の接着はいずれも僅かであった.以上から,CyB 50μg/mLの培養液への添加はバイオ人工糸球体における内皮細胞の透過性の強化に適用され得ることが示された.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top