日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
原著
腎性貧血に投与した3種類の静注用鉄剤の治療効果の比較検討
今田 直樹清水 輝記大西  彰森田 壮平森 優小山 正樹青木 正畑 佳伸田中 善之
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 41 巻 4 号 p. 237-243

詳細
抄録

血液透析患者の貧血の治療には静注用鉄剤と遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の投与が重要である.鉄剤については効果に差がないと一般的に考えられている.しかし,当院では静注用鉄剤を含糖酸化鉄からシデフェロンに変えた時に変化がおこることを経験している.認められた変化は予想を上回る血清フェリチン値の上昇,鉄剤の投与量およびrHuEPO投与量の減少であった.今回,同一患者に3種類の静注用鉄剤(含糖酸化鉄,シデフェロン,コンドロイチン硫酸鉄コロイド)をそれぞれ1年間投与して各鉄剤投与期間のヘマトクリット(Ht)値,ヘモグロビン(Hb)値,鉄剤投与量,血清フェリチン濃度,平均赤血球容積(MCV),rHuEPO投与量について比較検討した.対象は慢性維持透析患者86例である.なお,rHuEPOの投与はHt値を指標に当院で設定しているrHuEPO投与量に従って次週の投与量を決定した.静注用鉄剤の投与量は毎月1回測定したフェリチン濃度を基準に決めた.その結果,観察期間中を通して,平均Htはほぼ30%を維持できていたが,その中でもシデフェロン投与期が最も高かった.さらに,シデフェロン投与期では,血清フェリチン濃度の有意な上昇と,MCVの増大が認められ,Hb値も最も高かった.また,フェリチン濃度の維持に必要な鉄投与量はシデフェロンが最も少なく,rHuEPO投与量は,含糖酸化鉄と比しシデフェロン投与で有意に少なかったが,コンドロイチン硫酸鉄コロイド投与とは差がなかった.このように,シデフェロンは少ない投与量でも有効利用され,最も血清フェリチン濃度を上昇させた.血清フェリチン濃度の上昇時期とrHuEPO製剤投与量の低下時期には重なりがみられ,血清フェリチン濃度の確実な上昇がrHuEPO製剤の投与量の減量を可能にしたと考えられた.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
次の記事
feedback
Top