抄録
70歳,男性.糖尿病性腎症を原疾患とし,15年の透析歴がある.1995年頃から下血を主訴に他院で消化管精査行うも出血源特定できず.AB型Rh(-)と特殊な血液型のため製剤入手に苦慮した.精査加療目的で2006年6月当院初診.小腸内視鏡上,Treitz靭帯を越えて3mの部分の拍動性の出血性病変に対してAPC焼灼とクリップで止血を行った.その後も2006年11月,2007年8月,9月に同様のエピソードがあり,内視鏡上,別部位に出血を認めたが,同様の処置を行い止血が可能であった.本例では,頻回の再発を認め,また入手困難な血液型であったため治療に苦慮したが,小腸内視鏡による止血を得た.ESRD患者は消化管出血の頻度が高く,上部下部内視鏡上,出血源が特定できず診断,治療が困難なことも多い.小腸内視鏡はこうした例でも開腹術を行わずに止血が得られ,有効な手段である.