日本透析医学会雑誌
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症例報告
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を呈したANCA関連腎炎の1例
金田 幸司福永 直也工藤 明子大野 絵梨今川 全晴大石 健司田嶋 倫江青木 宏平菊池 秀年安田 透松岡 一江縄田 智子竹下 泰内田 英司
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2009 年 42 巻 6 号 p. 453-458

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抄録

症例は91歳,女性.過去に腎機能障害なく,明らかな投薬歴もなし.平成19年2月上旬からふらつき感出現.同年2月21日,顔色不良と顔面浮腫を自覚したため近医受診.BUN 105 mg/dL,Cr 8.2 mg/dLと腎機能低下を認めたため,紹介入院となる.同日から血液透析開始.翌日には肺出血も発症し,MPO-ANCA 141 EUにてANCA関連急速進行性腎炎および肺出血例としてステロイドおよび透析治療継続した.血液透析開始13日目に血小板が18.9万/μLから1.7万/μLまで低下しHIT抗体陽性でヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断した.HITに対して,ヘパリンを中止し透析時の抗凝固剤としてフサン®を用いたが,血小板数は増加せず,直接的抗トロンビン薬であるアルガトロバンに変更後に血小板数は改善した.本例はその後,ANCAも正常化しCrも4 mg/dL前後で安定し透析は離脱し退院している.さらに約5か月後の検査成績でも血小板の低下は認められなかった.HITは透析導入期に数%の頻度で発症し回路内の凝血や動静脈血栓等の臨床症状を呈するとされるが,本例のように定期検査による血小板減少が診断の端緒である場合も多い.血栓性合併症による死亡率は20%に及び特にANCA関連腎炎発症早期にはDIC,薬剤起因性,血栓性微小血管症(TMA)等の血小板減少をきたす病態も併存しやすく,HITが疑われた時点での早期診断治療が重要であると考えた.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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