日本透析医学会雑誌
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症例報告
副腎外膀胱褐色細胞腫と腎細胞癌を同時に認めた長期血液透析患者の1例
山崎 安人渡辺 淳一崎村 直史宮崎 健一村谷 良明塚崎 祥子西村 直樹
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2009 年 42 巻 8 号 p. 595-599

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抄録

患者は61歳,男性.1998年,慢性糸球体腎炎による末期腎不全で血液透析を導入.2008年7月,定期の腹部CTで左腎腫瘍,膀胱腫瘍を認め精査し,左腎腫瘍はT1N0M0,膀胱腫瘍はT2N0M0の臨床診断に至り,2008年8月,全身麻酔下に根治的左腎摘除術,膀胱部分切除術を施行.病理診断で左腎腫瘍はClear cell carcinoma,pT1N0M0,Grade 2,膀胱腫瘍は膀胱褐色細胞腫pT2N0M0であった.術前より高血圧を認めたが,発作性の高血圧や失神,排尿に関連した症状を認めなかったため,褐色細胞腫を鑑別診断として考えておらず,ホルモン学的検査を施行していなかった.術中,術後特に血圧変動に問題なく,膀胱褐色細胞腫はホルモン不活性腫瘍と思われた.透析患者における膀胱腫瘍の頻度は非常に少ない.乏尿・無尿である透析患者においては肉眼的血尿などの症状を認める機会が少なく,発見が遅くなることも多い.透析患者におけるスクリーニングとしては膀胱洗浄細胞診や積極的な膀胱鏡を行うしか方法がない.透析導入や腎移植の精査の際にみつかることも多く,本症例でも定期の腹部CT検査で偶発的に認められた.今回われわれは長期血液透析患者における膀胱褐色細胞腫と左腎細胞癌を同時に認めた非常に珍しい症例を経験した.血液透析患者に膀胱褐色細胞腫を認めた症例は本邦5例目で,腎細胞癌を合併した重複腫瘍の症例としては本邦初であり,透析患者における腫瘍発生や膀胱褐色細胞腫に関して若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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