日本透析医学会雑誌
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原著
東京都多摩地区の透析施設における新型インフルエンザA(H1N1)の発生状況およびワクチン接種状況に関する検討
安藤 亮一要 伸也吉田 雅治村上 彰栗本 義直桧垣 昌夫小沢 尚松川 重明宮川 博村上 円人小泉 博史杉崎 弘章山田 明長澤 俊彦
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2010 年 43 巻 11 号 p. 891-897

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抄録

2009年4月から2010年3月まで流行した,新型インフルエンザA(H1N1)の発生状況およびワクチン接種状況について,東京都多摩地区において調査した.調査方法は,三多摩腎疾患治療医会の災害ネットワークを活用し,2009年10月から2010年3月までの透析患者およびスタッフの新型インフルエンザA(H1N1)の新規発生数および2009年11月から2010年3月までの新型インフルエンザA(H1N1)ワクチンの接種状況について集計した.93施設中延べ76施設より回答があり,透析患者,スタッフともに感染率は2009年10月より漸減し,2010年3月には0となった.6か月間で,透析患者70名,透析スタッフ25名の感染が報告された.感染率は透析患者1.58%,スタッフ2.59%であった.人工呼吸器を要する重症例は透析患者で1例に認められたのみで,その症例も軽快退院し,当地区における新型インフルエンザA(H1N1)による透析患者の死亡例はなかった.透析患者の感染者のうち65歳以上は34.3%であった.A型インフルエンザ迅速診断キット陽性率は,透析患者40%,スタッフ60%であった.新型インフルエンザA(H1N1)は2009年~2010年で国民全体の6人中1人が感染したといわれるが,今回の検討では,透析患者,スタッフともに感染率は低かった.その主な原因としては,年齢構成が特に透析患者で高かったためと考えられた.地域の透析施設における新型インフルエンザの発生状況の調査および情報共有は感染対策上有用と考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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