日本透析医学会雑誌
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原著
腹膜透析患者の腎性貧血管理における高用量ダルベポエチン-αの有用性
栗山 哲大塚 泰史上田 裕之神崎 剛菅野 直希細谷 龍男
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2010 年 43 巻 3 号 p. 303-308

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抄録

目的:腹膜透析(PD)患者の腎性貧血管理は不十分であることが知られているが,その一因にerythropoesis stimulating agent(ESA)投与量の絶対的不足が指摘されている(PDではrecombinant human erythropoietin(rHuEPO)で6,000 IU/週以内,血液透析(HD)は9,000 IU/週以内が保険適応).一方,長時間持続型ESAダルベポエチン(darbepoetin-α:DA)は,保険適応量はrHuEPOよりも高用量である.本研究は,腎性貧血管理が不十分なPD患者において,rHuEPOからDAに変更・増量することにより,腎性貧血が改善するか否かを検討した.対象と方法:rHuEPO 12,000 IU/2週(皮下注)治療下に24週以上経過観察したPD患者44例を検討の対象とした.治療経過中にHb濃度11 g/dLに達しない患者は,44例中31例(31/44=70%),また,Hb濃度10 g/dL以上に達しない患者は14例(14/44=32%)であった.後者の14例をrHuEPO投与下で24週間の観察期間を終了した後,DA 60 μg/2週(静注)に変更し,貧血状態を2週間ごとに評価しHb濃度に増加がみられない場合はDAを段階的に20 μg/2週ずつ増量した.結果:1)rHuEPOからDAの切り替え増量によって14例のうち13例がHb濃度の上昇を認めた(有効率13/14=93%).この反応は統計学的に有意であった(p=0.016,Fisher's direct method).Hb濃度でみると,rHuEPO投与期間の観察開始時は9.4±1.4 g/dLであり,終了時には9.2±0.9 g/dLと変化がなかった.一方,DA投与開始時は9.2±0.9 g/dLのHb濃度は,観察終了時には10.7±1.4 g/dLと有意に上昇を認めた(p<0.001 by Student's t test).2)rHuEPOからDAの切り替え増量によって14例中7例(50%)がHb濃度11 g/dL以上を達成した.この際,DAの投与量は60 μgから140 μg/2週であった.3)rHuEPOからDAの切り替え増量によって14例中13例(90%)がHb濃度0.5 g/dL以上の上昇を観察した.この際,DAの投与量は60 μgから140 μg/2週であった.4)観察期間中,高血圧の増悪など重大な副作用は認められなかった.結論:PD患者においては,現行のrHuEPO治療では大多数の患者でHb濃度11 g/dL以上を達成することは困難である.この原因は,現行のrHuEPOの保険適応量の絶対的不足が考えられる.DAの比較的高用量使用は,これらの患者の腎性貧血改善に有用性を認める.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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