日本透析医学会雑誌
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原著
狭窄に起因するバスキュラーアクセス血栓性閉塞に対する外科的治療とインターベンション治療の比較
伊藤 豊岡田 玲木村 慶子高橋 亮三輪 尚史櫻井 寛坪井 正人春日 弘毅佐藤 隆
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2010 年 43 巻 3 号 p. 297-301

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抄録

バスキュラーアクセス(以下VA)閉塞の治療としてインターベンション治療(VAIVT)が発展してきたが,その治療成績が従来の外科的治療と比較されたデータは少ない.そこで,VAIVTと外科的治療の成績について検討した.対象はVA閉塞により2004年1月より2008年12月までの間に外科的治療を施した533例,延べ879回と,2006年4月より2009年3月までにVAIVTにより閉塞治療を施行した54例,延べ156回(VAIVT群).外科的治療を行った症例を,血栓除去および狭窄部位に対するballoon angioplastyを追加した群56例,延べ189回(外科的balloon angioplasty群)と吻合部の変更などを追加し,狭窄部位そのものをVAから除外した群477例,延べ690回(外科的修復群)に分けて,次回のVA治療までの期間(1次開存率)につき検討した.さらに,VAが自己血管で作製されている場合と人工血管が使用されている場合に分けて,比較検討した.2年開存率は,外科的修復群,外科的balloon angioplasty群,VAIVT群でそれぞれ34.0%,11.5%,11.1%であり,外科的修復群は他の2群にくらべて有意に良好であった(p<0.0001).自己血管VAでは,それぞれの2年開存率は59.8%,35.7%,33.7%(p=0.0005),また,人工血管VAでは,それぞれ22.8%,9.2%,5.9%であり,同様の結果が得られた(p<0.0001).今回の検討では,VA閉塞の治療として,VAIVTを施行した場合の一次開存率はルート修正を含めた外科的治療には劣るものの,外科的血栓除去+balloon angioplastyと同等なものであった.ルート修正を含む外科的治療の一次開存率は良好であるが,長期的にみた場合,VA作製可能部位が減じていくことになり,VAを温存できる利点を持つVAIVTとの比較は難しい.少なくとも短期成績からはVAIVTを第一選択とする根拠となりうると思われた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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