抄録
ANCA関連血管炎において,単純血漿交換(PEX)や二重濾過血漿交換法(DFPP)は重症例で施行され,その有効例が報告されている.一方,PEXによるアレルギー反応やDFPPによる出血傾向,感染症の増悪などの重篤な副作用をひき起こす場合があり,その施行には十分な検討が必要と考えられる.症例1は75歳,男性,MPO-ANCA関連血管炎に急速進行性糸球体腎炎(RPGN)および肺胞出血を併発したため,ステロイドパルス療法とPEXを2クール施行した.症例2は43歳,女性,非常に急速な腎機能障害の進行を認めたためステロイドパルス療法とDFPPを施行した.DFPP例において一時的にIgGおよびフィブリノゲンの低下を認めたが,いずれの症例もplasmapheresisによる明らかな副作用はなく,MPO-ANCA titerの著明な低下と肺胞出血やRPGNを含む重篤な症候の速やかな改善を認め,良好な経過を得た.今回提示したMPO-ANCA関連血管炎の2症例では免疫抑制療法に加えてplasmapheresisが病態改善に有効であったと考えられる.本疾患におけるPEXおよびDFPPの選択には肺胞出血を含む出血傾向や全身の状態を検討し判断する必要がある.