日本透析医学会雑誌
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症例報告
血液透析導入1か月後に上腸間膜動脈閉塞症をきたした1例
安田 圭子佐々木 公一畑中 雅喜猪阪 善隆楽木 宏実林 晃正
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2011 年 44 巻 4 号 p. 323-328

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抄録

症例は85歳,男性.慢性腎臓病,慢性心不全のため入退院を繰り返していた.血清クレアチニン(creatinine:Cr)値は4.5mg/dL前後であったが保存的には体液管理ができず,平成21年10月から血液透析(hemodialysis:HD)を導入した.内シャント造設術に際して,慢性心房細動(atrial fibrillation:Af)に対して内服していたワルファリンをヘパリンに変更したが,11月下旬の術後からはワルファリンを再開した.術後11日目の夕食摂取後に,突然上腹部痛が出現したが,心電図に変化はなく腹部所見は乏しく,腹部X線および検査所見では大きな変化を認めなかったため,鎮痛薬の投与を行い経過観察した.しかし,翌朝腹部全体に反跳痛が出現したため,造影CTを施行したところ上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)に閉塞を認めた.発症から約12時間が経過しており,カテーテルによる動脈造影下での血栓除去療法の適応はないと判断し,手術を勧めたが同意が得られず,その翌日死亡した.SMA閉塞症は,近年の画像診断および治療法の進歩にもかかわらず,依然として予後不良の疾患である.その原因としては早期に本疾患を疑うことの困難さによる治療の遅れがある.また,本疾患の発症にはAfの合併との関連が指摘されているが,HD患者ではAfに対する抗凝固療法に関して一定の見解が得られておらず,今後の検討課題といえる.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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